円の為替レートの変動を考える時、長期的には円安に動くと見るのが妥当ではないか。

来年秋の米大統領選挙をひかえたこの時期、国際機軸通貨をもつアメリカの声が大きくなりがちで、雇用増をねらった選挙対策として、ドル安円高誘導が取り上げられやすい。だが、こうした短期的変動をこえた長期的な視点では、円をめぐるファンタメンタルズは、円の弱含みを意味している。

日経産業新聞から「ＥＱＵＩＴＹ」記事（2003年10月21日付）を見てみよう。

• 　与野党のマニフェストを読んだ。いずれも、どういう国にしようとしているのか、思い描くことはできなかった。
• 　　「官から民へ」「脱官僚、脱中央集権」はよいとして、どういう経済・社会になるのか全体像がみえない。国も地方も巨額な財政赤字を抱えている。地方に財源と使途を移しても、増税なしには行政サービスの低下は必至だ。税負担と行政サービスのバランスをどう考えるのか。年金改革も基礎部分を税で賄うとして、その給付額で老後の生活が成り立つと考える国民はいまい。どれほどの自助努力が必要か、支援策もわからない。
• 　（中略）
• 　今は円が強く、所得は伸びずとも実質所得の水準は高い。しかし、間もなく日本の人口は減少に向かう。高齢化も急速に進む。五年とたたずに貯蓄率の低下、経常収支黒字の減少から大幅な円安に見舞われる可能性がある。そうなれば実質所得は低下し、生活水準の引き下げを余儀なくされる。経済再生に残された時間は短い。それとも、国が演出した過剰流動性相場のなかで、資産作りの大博打でも打てというのであろうか。（街灯）

大博打など打てる余裕はないだろうが、防衛策は打たなければならない。長期的な安定性あるいは値上りが期待できる通貨に、貯金の一部でも移しておくのは、まずい判断ではないだろう。
（２００３．１０．２９）

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