体験46.2℃

私(松崎)がオーストラリアで体験した最高の気温は、ずいぶん前のことですが、パースでの夏の午後の、46.2度でした。もちろん、私の人生での最高記録です。

その日、私は大学に行く必要があって、炎天の午後2時ごろ、暑さで人影も途絶えた路上を自転車で走っていました。夏のことですから、暑いのは覚悟の上でしたが、その日の暑さはちょっと違っていました。

顔に吹き付ける風はドライヤーが吹き出す熱風のようで、両眼は乾燥から自らを守るためか涙を流し、鼻孔も同じ理由からか鼻水がたらたら流れ出るしまつでした。

ご披露に値するような話でないのは承知していますが、その鼻水が空気の乾燥のためにみるみる乾いてハナクソとなります。後でそれをほじらなければならなかったのですが、空気の汚れがないためか、ほじり出されたその物体が黒くなく、みごとな琥珀色だったのには驚きでした。

さらに、発見はそれだけではありませんでした。自転車で進んでいて、風に押し返されて顔に当る自分の息が、ちょっと変なのです。そこでもしやと思って、息を「ハー」と(「フー」とではなく)腕に吹きかけてみました。

するとどうでしょう。腕の皮膚で感じる自分の息が、なんと冷たいのです。

それもそのはず、気温は46度を超えているのですから、体温より10度近くも高く、はく息が体温より高いはずはありません。10度も差があれば、冷たく感じることはありえます。

それで、自転車をこぎながら想像しました。もしここで東京の満員電車が走っていたとするなら、その車内は、人々の体温で「冷房効果」があるはずだと。

ともあれ、その時の乾燥度はすさまじいもので、湿度は2〜3パーセント。体がみるみる干からびてゆく様子がよくわかり、水をいくら飲んでも、すぐにのどの乾きを覚えました。

乾燥を怖いと感じたのは、この時が生まれて初めてでした。

(2003.11.23)
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