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脳の健康、10の維持

Source: Here are 10 possible ways to bullet-proof your brain, The Weekend Australian Financial Review, 23-27 December 2005.


 1.外的傷害から守る
 脳を守る最も明白な方法は、外的傷害に会わせないことです。そのために、車中ではシートベルトを着用し、バイクに乗るときはヘルメットをかぶり、また、ボクシングは行わないといった、必要な予防措置をとることです。
 
 2.酸素を充分に供給する
 脳を守るもうひとつの重要な方法は、脳に十分な酸素を供給することです。もし、血栓や動脈硬化などで動脈の血流が損なわれている場合、脳細胞に酸欠状態が発生します。それを避けるためには、循環系統が常に良好な状態であるように維持することが必須です。
 
 3.「さび」とたたかう
 脳が酸素を代謝する際、フリーラジカル
(訳注参照)という副産物を生みます。これは、金属の「さび」のようなもので、脳細胞を破壊します。また、脳が老化すると、「さびどめ」を生産する能力も低下し、さびに対する脳の抵抗力を弱めてゆきます。しかし、さびと戦う抗酸化レベルを上げることにより、精神活動の下降の度合いを抑えることができることが実証がされています。天然ビタミンEは、強力な抗酸化剤です。ある研究では、ビタミンEを定期的に摂取していた高齢者グループは最も高い認知能力を示した、との結果が得られ、また、同様な摂取をしている別の高齢者たちは、老人ホームに入る割合が、そうでない人たちの半分でした。さらに、他の調査によれば、このビタミンの効用はそれ以上で、その摂取者は、極めて良好な頚動脈(脳に血を送る動脈)の血流を示していました。

 4.濃色野菜をとる
 抗酸化物質をたくさん含む食物を常食すると、「さび」に対抗しやすくなります。果物や野菜のもつ抗酸化力は、自然染色素に含まれています。濃い色の野菜を取り混ぜて摂ると、多彩なこうした植物化学物質を吸収することができます。なるべくなら、皮もいっしょに食べましょう。スモモ、干しぶどう、キャベツ類、ほうれん草、ブルーベリー、その他の果実類は、抗酸化レベルを上げるために最適であるとの調査結果が出ています。年老いたネズミに、ほうれん草あるいはブルーベリーを与えた実験では、その認知と運動神経の機能が、はるかに若いネズミに等しいまでに回復し、加齢による損傷から脳細胞が保護されていることを示しました。
 
 5.毒を取り入れない
 アルコール、麻薬、タバコは、脳に損害を与えます。長期の多量喫煙者は、治癒不能の脳損傷をもっている可能性が高く、記憶障害やボケを発症するリスクも高レベルです。程々のアルコールの摂取は、記憶障害を予防する可能性がありますが、その程度ははっきりしていません。喫煙者は、アルツハイマー病にかかる危険度が非喫煙者の2倍ほどにもなります。禁煙を今からでも始めることで、後になってからの記憶障害のリスクをそれだけ軽減することができます。楽しみのための麻薬摂取であっても、回復不能な細胞損傷の原因となる可能性があります。
 
 6.良性脂肪をとる
 魚は脳に良い食物です。魚は、脳の脂肪酸細胞膜組成をほぼ決定する、良性オメガ3脂肪を含みます。オメガ3を減らす食事療法は、細胞膜組成を壊し、膜の浸透作用を妨げる結果をもたらします。最近の調査では、鮭、カレイ、その他寒流系の魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やオメガ3酸が豊富な食事療法は、脳をアルツハイマー病による損傷から守る効果があることを発見しています。DHAの恒常的な摂取は、通常の脳の働きやアルツハイマー病の症状には不可欠です。オメガ3はその他、クルミ、亜麻の種、大豆、カノーラ油に多く含まれています。
 
 7.睡眠は充分に
 脳科学により、眠っている時でも、脳が働いていることが明らかとなっています。ということは、特に長い時間働くその理由があまりないことを意味しています。長時間働くとは、睡眠時間を削り、覚醒時の脳の働きを妨げるばかりでなく、睡眠中も働いている脳の機能を削ることでもあります。つまり、睡眠中も、脳は、新しい記憶を処理し、技能をみがき、問題を解決し、さらには、創造的なアイデアすらもたらしてくれます。ハーバード大学が行った最近の調査では、新しい技能を習得している際には、脳は睡眠中に、その技能について、意識的な考えに頼らないでもよいように脳の活動を変化させ、その人の記憶や達成能力を高めています。これは、教育面ばかりでなく、脳溢血後のリハビリテーションの面でも、有意義な発見です。
 
 8.瞑想によるストレス管理
 ストレスにさらされている時、脳は何種類かのホルモンを分泌しており、それが何日も続くと、有害となります。慢性的なストレスは、鬱や不安状態を引き起こし、脳の機能をも阻害します。最近の調査では、定期的な瞑想は、前頭皮質の知覚を処理する部位の厚さを増し、加齢による厚さの減退を遅らせる可能性があります。瞑想はまた、ストレスの軽減に役立ち、「気持ちのゆとり」を広げます。モーツアルトを聞くことにより、数学的、空間的推察力が増したという調査結果もあります。また他の調査では、物語を聞くことも、同じように効果的であることを見出しています。これは、こうした体験がリラックスさせたり、刺激をあたえる効果をもたらし、脳の活動を活発化させるからです。
 
 9.精神の運動
 頭の切れをよくし、回転を早く保つために、新しい技能の習得を継続して挑戦しつづけましょう。活発な脳は、脳神経細胞に新たな結合を生みださせ、情報の蓄積と引出しをより円滑にします。また、コンピュータのマウスを左手で使ったり、服を着る時、眼をつぶって行うなど、簡単な訓練で脳を活性化できます。今後、「脳のジム」において、その人にあったメニューが提供されるようになるでしょう。
 
 10、身体の運動
 運動は、身体の血流を増加させるばかりでなく、脳の血流も増加させ、脳細胞の成長を促進させます。毎日30分の運動をめざしましょう。不規則に強い運動をして張り切るより、定期的な運動のほうが効果的です。その理由は、強度の高い運動は、酸素をよりたくさん燃焼するため、フリーラジカルを発生させるからです。同時に、運動は、自然な抗酸化物質を増加させ、脳を守ります。ネズミを使った実験では、規則的な身体運動が、主に記憶や学習をつかさどる海馬部における新たな脳細胞の生成を助けることが解りました。また、おだやかなヨガも、脳によい影響を与えます。昨年、ことなるヨガの姿勢と感情制御能力との関係を調査したところ、後ろにそる姿勢が、メンタル能力の向上に最も適していることが解りました。
 
 (翻訳: 松崎 元、2006年2月10日)

 【追記】 2011年12月に完成した、脳の健康の英文書の翻訳、 『 “ボケ” ずに生きる』 があります。是非ご参照を。

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