オージー式、高齢化対策
オーストラリアの高齢化問題は、その程度はまだ、日本ほど深刻ではありませんが、将来、確実にやってくる問題です。ただオージー式対策といっても、ユニークな特効薬があるわけではありません。要所はやはり、お金の問題。政府は、それを、医療費の削減と、退職を遅らせ仕事を続ける、の二点に重点をおいて、取り組み始めようとしています。

医療費の削減の点では、病院に入らなくてもよい生活ということをポイントとし、家庭か地域社会にとどまって生活できるような、ヘルスケア制度の充実が必要としています。

十月の総選挙で四選を果たした現政府は、高齢者向けヘルスケアに、新たな制度を導入する様子は見せていませんが、高齢者に限らず、全般に、既存の施設への補助金を増やし、いわゆる制度の民営化はこれまでにも進めてきている政策です。また、今回の政府のコメントも、あくまでも経費節減を主眼とした新制度ですから、政府が強調する「費用効率」といった言葉が示すように、今後も、抑制を基調とした政府支出となるでしょう。

また、退職を遅らせ、より長く労働人口にとどまらせようとの政策は、日本とよく似ています。ただ、年齢による雇用差別が禁止され、一定年齢に達すると強制的に解雇される「定年」という制度もないオーストラリアでは、企業に定年年齢の引上げを強いるという政策は出来えず、間接的な促進をはかる政策が中心となります。

政府によると、55歳以上の男性と、女性、および障害者年金受給者を、その促進の対象とするとしています。ことに、さっそく打ち出されている方策が、社会保障給付のうち、障害者への休業補償の査定を厳しくし、労働人口への参加を促そうとするものですので、その受け止められ方はネガティブです。


すでに、過去三期の自由・国民連合政府のもとで、社会保障制度は、政府保証型のものから、より自助努力型のものへと変更されてきています。政府年金も、基礎的年金を提供する以上のものでなく、それ以上の豊かな老後のぞむ人は、それを自前の年金をどう積み立て、上積みできるかにかかっています。

オーストラリアの最近の住宅投資ブームも、退職後の資金作りを計画するベビーブーマー(団塊世代)による投資熱に大きく支えられているものです。お陰で、根強いその需要は、衰えそうにありません。そういう意味では、リスクをとって自分で将来を切り開く、そうした精神が、日本より、いっそう広まっている、あるいは、広まざるを得ない、ということは確かでしょう。

(2004.11.26)
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