IRs政策、政局の焦点に
来年末の総選挙に向かって、インダストリアル・リレーションズ (IRs、労使関係) 政策が、オーストラリア内政の重大な争点になる気配があり、先週に発表された現行労使関係法の見直し内容を検討してきた委員会報告が口火となって、来年へと向けた大論争にも発展しそうな成り行きです。

労働党が12年ぶりに政権を奪還した2007年11月の総選挙では、その前の2004年選挙で、自由・国民連合が予想外の大勝をして上下院ともの多数を握り、その絶好の機会を生かし、選挙公約にもなかった労使関係法を抜本改正した反発が大きく響いて、長期の安定を見せていた保守政権がくずれました。この選挙では、僅差ながら、4期連続して首相をつとめてきたハワード氏が落選するという、まったく予想外な結果までをも示し、反発の大きさを物語っていました。

この2007年の政権奪還に大きく寄与したのが、労使関係法の改正で、労働運動への締め付けが大幅に強化されたことに危機感をもった労働組合の全力をあげた運動でした。この労使関係法の改正では、雇用に際した労働契約の原則を、従来の集団的契約から労働者と雇い主との個人契約を基盤としたものに切り換え、労働組合の介入の機会を締め出しました。


そうした政権交代の結果、改正された労使関係法は再び集団的契約を基盤としたものに戻され、それが現行のフェアー・ワーク法(FWA)です。そして、来年の総選挙に向けた準備として、労働党政府はFWAの見直しを前提に、委員会を選任し、ビジネス、労組、政府の三者から意見を聴取してきました。その調査結果が先週発表され、FWAは基本的に順調に機能しており、その集団的契約を基本とした原則を見直す必要は認められないとしました。

こうした見直し委員会の基本見解に、ビジネス側は強く反発しており、野党も同法の枠組みの変更が必要であると主張しています。

 (2012.8.06)
 
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