日韓連合、反撃の開始か
3月17日、日本経済新聞を例にして取り上げると、 「丸紅、世界最大級の鉄鉱山開発、豪で事業費8400億円――韓国ポスコと組み資源メジャーに対抗」 との記事が朝刊一面トップに掲載されました。これは、時間の物差しを延長して言いますと、鉄鉱石売買をめぐるひとつの反攻が始まったか、とも見られる動きです。
   
というのは、3年前の本サイト記事(豪州鉄鉱石供給に独占体制」)で述べたように、そのさらに昔の1970−80年代、オーストラリア鉄鉱石のほぼ独占的な輸入元は日本の製鉄会社でした。そこで日本の製鉄各社は、互いに結束して価格交渉に臨み、足並みの乱れ勝ちなオーストラリアの鉱山会社に対して優勢に立ち、価格決定の支配権を見せつけていました。

そうした受身の豪州鉱山会社の立場を逆転しようと、その後十数年間で築かれてきた戦略が、鉱山会社同士の合併・買収による、鉄鉱石生産側の寡占化でした。そしてその世界戦略のほぼ達成がみられたのが、上記記事の2009年ころです。その結果、価格決定の支配権は売り手側に移り、しかも、それまで一年ごとの長期契約が主流であった売買契約が、半年、あるいは四半期ごとの短期契約へ、さらには取引市場の開設による市場取引制の導入へと切り替えられてきました。

こうした価格決定の支配権の逆転の結果、中国経済急成長による旺盛な需要が引き起こした売り手市場も作用して、一時は、鉄鉱石価格が一年で二倍以上にも跳ね上がるといった前例のない事態も出現し、日本の製鉄産業は、年間一兆円を越える負担増をなめさせされました。

そこに生じた今回の日本の商社丸紅と、韓国の製鉄大手ポスコとの連携です。ただいまのところ、鉄鉱石鉱山側の寡占の規模と比べると、この連携はまだ比較的小さなものです。しかし、この丸紅・ポスコの連携が契機となって今後他社間にも拡大し、あるいは、その先で中国の製鉄会社の合流をももたらした場合、それは、再度の価格決定支配権の反転をも引き起こすメガチェンジとなる可能性があります。

一方、すでに三菱商事は、別の大規模な鉄鉱石鉱山(Jack Hills Iron Ore Mine) の全権益を豪州資源会社より買い取り(この3月末完了の予定)、その生産開発を準備しています。ことに現在、巨大な投資を必要とするこの開発プロジェクトへの合弁相手を模索中です。中国企業の参加も話題にのぼっており、もしそれが成立すれば、いよいよの日韓中の連合態勢の出現も現実味を帯びてきます。

過去数年の間で、日本の商社や製鉄会社は、鉄鉱石あるいは石炭の開発権益を相次いで取得し、従来の原材料品の媒介ビジネスの担い手から、実生産への投資ビジネスへの位置に重点を移してきています。それだけ、大きな資本投入と相応のリスク負担は避けられませんが、上流から下流までを一貫して手掛けたより大規模な事業を手掛けることで、より大きな収益が見込めるようになってきています。


こうした、一貫した生産体制の構築と東アジア三国連携の成長しだいでは、東アジア勢力の価格決定支配権の再獲得が見られるのも、あながち理論上の話ではなくなりそうです。

 (2012.3.21)
 

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