BMA紛争、全豪労組が年金基金に働きかけ
ACTU(全豪労働組合評議会)は機関投資家に対し、長期化して解決の兆しの見えないBMA(BHPビリトンと三菱による共同企業体)での労使紛争について、そのリスク評価の見直しを図るように働きかけを始めました。

ACTUは、年金基金などの機関投資家の投資担当者にあてて、BMA紛争によりリスク度が高まっているのではないかと問う書簡を送り、当事者労組に連絡をとり、膠着状態となっている企業協約の更新交渉について、問い合すことを勧めています。

ACTU副書記長、ティム・ライオンズはその書簡で、BHPの株価や産品価格が軟化しており、BHPは 「生産高や利益を削り、投資者に犠牲を強いている近視眼的な政策をとるのではなく、リスクを軽減する方策をとる必要がある」 と述べています。

ことにその注釈が述べるところでは、BMA鉱山からの製鉄用石炭の輸出量は約2700万トン減少し、輸出価格をトン当たり213ドルとすると、5億7500万ドル(約460億円)の売上減となっていると見積もっています。また、すでにBMAの石炭貯蔵は底をついており、これ以上の生産削減やロックアウト(労働組合員の締め出し)は、さらに急激な売上高の減少をもたらすことになる、と述べています。

ACTUは、もしBHPが、その契約上の義務が免責される不可抗力を宣言するなら、BHPは顧客との問題を作り出すことになる、と主張しています。

生産高の低下は、部分的には大雨の影響でもありますが、ACTUは、オーストラリアの投資家や年金基金に、BHPは 「硬直して、政治的意図にもとづく政策」 によっていると述べています。

他方、BHPの広報担当者は、 「BHPは、競合企業と該当組合がすでに合意している柔軟性〔条項〕と、競争力と継続した成長を追求しているだけである」 と述べています。

また、「BMAは、すべての関係者――被雇用者、地域社会、そして企業――にとって、公正で公平な条項を、出来る限り速やかに合意することに努力している」 とも述べています。

企業協定更新の交渉は、賃金――経営側は3年間連続の毎5パーセントの賃上げを回答――についてより、勤務当番配置や経営権をめぐる条項をめぐって決裂しています。

この深刻化した膠着に、現在、80〜90年代の 「アコード(政労協調)」 路線の立役者、ビル・キルティー(当時のACTU書記長)がその仲裁に動いています。各労組の方針間にも温度差があり、それらをまとめて、どのような地点に着地してゆけるのか、その動きが注目されています。

 資料出所: 29 June, and 4 July, 2012, Australian Financial Review,.

 (2012.7.5)

7日の報道によると、ビル・キルティーが仲裁に入った交渉は、7月6日、基本合意に達しました。詳細は発表されていませんが、組合側は経営権に立ち入る要求を下ろし、使用者側はインフレ率を越える賃上げを上積みした様子です。今後、詳細事項のつめが行われ、二週間のうちに、紛争状態は終了する模様です。(2012.7.7)

 
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