移動しないオージー労働者
オーストラリア経済は、成長著しい資源・エネルギー産業と、低迷する世界経済と強い豪ドルの影響で急速にスローダウンしているその他産業という、二速度経済の状況を深めています。一般に、こうした状況なら、不景気産業から好景気産業へと労働力の移動が生じるはずなのですが、それが意外に起こっていません。

先週も、豪ドル高のおかげで国際競争力を失ったとして、NSW州ウーラゴンのブルーコープ・スチールの製鉄所が操業を停止しました。これにより、1600人が解雇され、うち1000人が新たな仕事口を捜さなければならなくなっています。

その一方、西オーストラリア州の鉄鉱石鉱山や天然ガス開発の新規プロジェクト現場では、2015年までに、3万6千人分の労働力不足が発生すると推計されています。

さっそく、NSW州からWA州へと、大陸を横断する職場移動や職業再訓練の計画が動き出しているのですが、オージー労働者たちは、それほど、国や産業側が期待するようには意欲を見せていないようです。

労働力移動の研究者によると、州間の人口移動は発生しているものの、その動機は仕事のためより、ライフスタイルのための移動がはるかに多いといいます。たとえば、気候温暖なクイーンズランド州へ、他州からの移動が多いのですが、その多数は退職後のリタイア生活の場をそちらに選んだというケースが多いようです。統計的には、移動者のうち、雇用理由の移動は、全体の三分の一といいます。

専門家曰く、 「労働力移動は、その距離に強く影響される。距離が遠くなればなるほど、希望者は少なくなる」。まさに、広大な国の悩みです。


(2011.9.5)

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