オージーの家計、世代格差拡大ながら全体は比較的平穏

メルボルン大学の研究所が実施するHILDA〔家計・収入・労働動態〕調査によると、2002年から2014年の間に、オーストラリアの貧困層は縮小し、社会福祉への依存は変っていないが、長期的貧困はまれなものとなっている。しかし、平均的な暮らし向きは改善しておらず、住宅価格の上昇にも拘らず、家計資産は増減はない、といった全体像が報告された。

また、世代間で資産格差が拡大し、資産額中央値は、同期間で、65歳以上の世代では61パーセント、55歳~64歳では39パーセント増加している一方、24~35歳では3.2パーセントしか増加していない。25歳以下ではわずか1.6パーセントである(下グラフ参照)。

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HILDA調査が示すところでは、今世紀初めには、家計収入中央値(税引き後でインフレおよび家計規模調整後)は大きく伸びた。しかし、2009年以後、伸びは行き詰まり、約45,000ドルで停滞している。

いくつかの点において、オーストラリアはこの経済減速によく対処し、2009年以降の所得の不均衡化を比較的小さなものとし、最近では、貧困の度合いはいくらか低下している。例えば、 全平均収入(中央値)の半分以下の収入の人々の総人口中の割合は、そのピークであった2007年の13パーセントから2014年には10.3パーセントに低下した。

さらに同調査は、2004年から2008年まで、労働年齢人口の社会福祉への依存は大きく低下していたものが、2008年の世界金融危機によって阻止され、その依存は2008年以来わずかに増大していることを示している。

それにもかかわらず、全体の経済的暮らし向きは、世界金融危機の以前のようには進展していないことは明白である。また家計への経済的プレッシャーが、保育園の利用や民間健康保険を維持するために増加している。これらの市場は大きな価格上昇を経験しており、それは近年、補助金を減らすために導入された政府政策によりいっそう悪化している。その結果、家計支出の伸びは、収入の伸びをはるかに上回っている。

HILDAデータの経年変化は、長期貧困は比較的稀であり、貧困からの脱出した85パーセントは3年以下になされている。だが、永続的または長期的な不利益をおよぼす決定要因では重要な視点を提供している。

すなわち、障害者、先住民、非英語圏からの移民、高齢者、独身者、農村居住者、教育レベルの低い人々にとっては、長期的に貧困が長期化する可能性がかなり高い。

 

(資料出所:05 December 2016, Australian Financial Review)

 

 

 

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