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第二期・両生学講座 第10回
「両生空間」 は、今回、50号を迎えました。思えば、その創刊は、3年半前の2005年8月。私の59歳の誕生日を期に、還暦に先手を打つ意気込みで、新たな自分の居場所を創設しようとして始めたものです。
それが、このように長く続くものとなるとは予想もしていませんでした。また、 「私共和国」 という分身の誕生などは、全くの想定外の発展でした。
こうした成功も、読者の皆様あっての成果と、深く感謝しております。
今後も、本サイトへの皆様の期待にお応えしたいと、今、気持ちを新たにしております。
ところで、その今、世界は百年に一度という大不況に見舞われています。しかもそれは、まだ始まったばかりで、この先、どのような猛威をふるうのか、予断もできません。世界はまるで、その不気味さの前で、縮みあがっているかのようです。
そうではあるのですが、私はこの歴史的一大事について、ある興味深さを見出すところがあります。
というのは、まだ、人の寿命は百年を越えていませんので、誰もが、こうした歴史的出来事を、その一生のうちに体験したり目撃できるものではなく、幸か不幸か、ちょうどその合い間に一生を送る人もいるわけですが、私の場合、その人生の終盤にさしかかったところで――つまり、その混乱に比較的に冷静でいられる時に――それに遭遇し、それを目撃できています。そういう点では、一番、ラッキーな廻り合わせに居るのではないかとも思えます。
さらに、これはこうした大不況を予想し、備えていたという主旨ではむろんないのですが、私は、世が順調な間でも、世の中の動きにどこか馴染んでゆけないところがあり、無益な転職を繰り返したり、せっかくの学歴を無駄にしたりして、かなり斜っかいな生き方をしてきました。そうした人生の脇道を歩いてきたかの経験は、こうした世界の大混乱時――つまりその表向きな仕組みが働かない時――には、そのいわば底辺体験と呼べるようなすべが、どこか役立ってくれているように思えます。すなわち、控え目に言っても、若い頃からの、自分がお金に換算されることの不快に端を発した、この世の一連のならわしへの抵抗感、それが、結果的ながら、この世のシステムの害毒から自らを守る、一種の抗体をつくってきたように思えるからです。また、少々力んで言えば、むしろ、混乱とも見えるこの時こそ、世の実相、ことに経済的からくりが、それこそ整然と、露呈されているのではとも思えます。
そういう意味では、そうした無雑な感覚に目を向け、かつ、それに素直に従えた――さまざまな葛藤は伴いましたが――若き日の自分に感謝したい気持ちでいます。
そこでなのですが、たかだか18歳あたりを発端に、それが少々成長して20歳代になったとは言え、人生経験も欠くそうした自分に、どのようにして、そうした判断力が生じていたのか、それが不思議でなりません。しかもそれは、短期的にはまったく無用でしかないことながら、それも覚悟で行った判断が、二十年後、三十年後に、じわっと効いてきている展開。これはただの偶然なのでしょうか。それとも、なにかそうした直観的洞察力が、人にはあらかじめ備わっているのでしょうか。
そこで思うのですが、その直観的洞察力とでも言えるものは、だれもがあまねく持っているものであるにも拘わらず、教育とか経験というものが、むしろその力を削いでゆくのではないか。つまり、人が、生物体としてその進化の過程で抽出、組み上げできた能力――丁度今年がダーウィン生誕から200年で、進化の革命性:ivolution
revolution が注目されています――が見せる、ある種の快、不快の判断があり、だからそれは、教育とか経験による後天的枠はめが乏しければ乏しいほど、発揮されやすいものであったのではないのか。
ちなみに、私は一時、自分は 「絶滅種」 ではないかと考えたことがありましたが、こうした混乱した環境にあっては、かえってその 「絶滅種」 こそが、 「適者生存」 してゆく可能性がある。
あるいは、私達の感覚にある諸要素を、子供性と社会性というものに大別して考えると、この両者は、往々にして相対立する要素をもち、ことに、一方が大きく極端に振れた時、他方がそれを矯正する対抗力になって働きかける、そういう平衡装置を私達は持っているのではないか。
さらに言えば、人類が綿々と紡いできた文明というものは、人が人を枠はめ、拘束し、支配するもので、一部の者には適しているものの、その他の多数には壮大なごまかしのシステム―― “よこせし” 世界――であり、それの発達過程であったのではないか――これはダーウィン的ではありません。
どうやら、そうしたやり過ぎの失態が、百年に一度ほど、露呈するのではないか。
いずれにせよ、これらはまだ生煮えの着想にすぎず、今後のじっくりとした煮込みが必要です。
(2009年2月14日)
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