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私共和国 第19回
今度の総選挙結果を、オーストラリアのメディアは、日本の有権者は 「政治的革命」 を選んだと報じています。また、鳩山民主党代表を 「日本のケネディー」
とも呼んだりもしていますが、これはちょっと点数が良すぎる気もします。
ともあれ、今回の選挙で有権者は、民主党に明瞭な単独過半数を与え、しかも、問題の衆参の 「ねじれ」 現象も解消させたのですから、是非とも、その国民の委託をまっとうしてもらいたいものです。
前回8月20日号の 『相互邂逅』 で、オーストラリアの二院制の実態に触れ、ほぼ十年ごとにオーストラリア社会の 「天地がひっくり返っている」 と表現しました。そういう意味で、日本もこれで、
「天地がひっくり返れる」 ことができるようになったわけで、たしかに、日本にとっては 「革命」 的な進展です。
それに、民主党の獲得議席数の308に、社民、国民、大地、日本などとの連立が成立してその議席数が加われば、衆議院総議席数の三分の二の320を超え、場合によれば、さらに共産の9も合流することもできるわけです。つまり、来年7月の参議院選挙で自民党が過半数をとりかえして新たな
「ねじれ」 が生じたとしても、憲法59条による三分の二条項の力により、今後四年間にわたり、大胆な議事決定が保障されたも同然です。
ねらってできるものではない選挙結果ですが、日本の有権者は、今回、じつに絶妙かつ決定的な選択をしたわけで、これを、野党に転落した自民勢力が言うような、一時の
「風」 などに終わらせたくはないものです。
ただし、変化に 「シャイ」 な (ただし今回、当地のメディアは日本を 「ハングリー」 と表現していました) 日本の有権者が、こうした驚異的な結果を生むほどに、日本がかかえる問題は深く、しかも、そうした問題は、国内的であるだけでなく、今回の世界的不況のように、日本だけが頑張って解決できる種類のものではない問題にもまだまだ深刻に捕われています。
日本の国会での攻防には、 「数のおごり」 という常套句があって、数の力にものを言わせることを非とする考え方が与野党双方にあります。鳩山代表も、31日未明の記者会見で、この言葉を用いて、
「それに頼るようなことをしない」 と発言しています。
いわゆる55年体制が成立した当時、日本の保守勢力にテコ入れし、日本を東アジアの反共の砦にしようとするアメリカより、CIAを通じた巨額の闇資金援助があったことは、いまや歴史的事実と認識されつつあります。逆に言えば、そうしたテコ入れ抜きに、自民党の長期安定政権はあり得なかったわけです。そうした
“後ろめたさ” あるいは不明解さも、自民党が 「数のおごり」 を攻撃されてもやむを得ない、また野党もそう噛みつくしかない、日本の政治の歯がゆい性(さが)となってきました。
しかし、今回の 「数」 は、もはやそうした 「テコ入れ」 も無用となった (むしろ、日本を変えようと逆向きのテコ入れが働いているのかも)、何の後ろめたさもない純然たるもので、是非とも、その数に託された、国民の無数の犠牲と苦難がゆえの、その切なる願いと選択を、真面目にかつ真剣に用立ててもらいたいものです。
こうして、 「革命」 勢力となって躍り出た民主政権は、今後、既得権力の保持者である、自民党と官僚による、両面からの攻撃やサボタージュにさらされることは避けられないでしょう。また、アメリカによる遠隔操作のような横槍も予想されます。それに、素人集団と揶揄される、まさに実績のない政権であることも確かです。
ともあれ、戦後日本が半世紀以上にわたって頼ってきた自民党政権にこうして印籠が渡され、事実上の初体験であるこの完全政権交代をもって、まさに初航海に乗り出す新政府を、衆知を結集し、最大効果を生みうる、実力体制へと育て上げて行きたいものです。
(2009年8月31日)
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