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<連載>  ダブル・フィクションとしての天皇 (第29回)

シベリア出兵

 私は、日本のシベリア出兵については、ある思い出があります。
  『相互邂逅』 の第二回の最後の当りに、中学校の時の歴史の授業のエピソードを書いたのですが、私の歴史好きのきっかけとなった出来事です。
 それは、日本がシベリアへ出兵していったのは、遠い西のロシア中央でロシア革命が起って国が大混乱している、そのすきを狙って日本がロシアの東の端に軍事進出したと、その授業で “体験的” に教わった記憶です。
 その解釈は一般的なものだと思うのですが、今回の訳読で著者のバーガミニは、そこに、アメリカの一種の “そそのかし” があったことを指摘しています。つまり、その時の日本は、もうちょっと慎重に世界の動きを見ていたのに、アメリカが自国の国是である 「反共主義」 を実行するため、ロシアへの介入の協力を日本に求めたことです。国際的影響力を増していたアメリカがそう動いたため、それが日本の慎重姿勢を変え、ことに、日本の軍部を勇気付けた。
 歴史とはなかなか奥が深い。ある、一般的な理解だけでは、その流れを決定付けた仔細なきっかけを見逃すことになります。
 今回の訳読は、そんなディテールがのぞけます。
 
 では、今回もその訳読にご案内いたします。
 
 (2010年8月15日)

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