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<連載> ダブル・フィクションとしての天皇 (第30回)
宮中某重大事件
タイトルの「宮中某重大事件」とは、1918年、昭和天皇の婚約が発表された後、そのフィアンセに色盲の遺伝があるかもしれないとの疑惑が起って、公式の報道はされないものの、政府、宮中関係者の間でひと騒動があった話です。
このフィアンセとは、久邇宮邦彦の娘、良子〔ながこ〕(伏見宮家系図 参照) だったのですが、その母は薩摩藩主島津忠義の娘であったことから、その島津家にまつわる色盲の血統が天皇家系に混じることを問題視したものであったようです。
この騒動の政治的背景には、日本の支配権力をめぐる薩摩と長州の争いがあり、宮中と薩摩が接近するのをきらう長州閥の山縣が、遺伝を口実に、その言いがかりを始めたもののようです。
その当時以降の日本では、こと宮中からみの問題となりますと、その報道はおろか噂すら困難となってゆきますが、今になっても、皇室関係の問題を議論には、どうしても自粛とか自制の意識が働かざるをえないところはあります。
その点、アメリカ人である原著者の論述には淀みがなく、日本人にはとうてい書け得なかった話にも及んでいます。
それにつけても、皇室に関係する婚姻、時代を遡ればその側室を含むその候補女性たちというのは、あたかも子生みの道具として特別に育成されてきたかの感がある人々です。げすな言い方を許していただければ、いかに帝にその気になってもらえるのか、そのためのあらゆる手練手管を身につけていたのが彼女たちであったようです。つまりは、それくらい魅力的であった人たちであったらしい。
時代はずれますが、源氏物語を読んでも、そうした候補女性たちの争いのすさまじさがうかがえます。ねたまれて呪い殺されてしまうほどでもあったわけです。
その一方、時代は昭和に変わろうとし、昭和天皇の権力構造が、そうした血縁を活用して、構築されてゆく過程が描かれています。
では、今回もその訳読にご案内いたします。
(2010年8月30日)
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