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<連載>  ダブル・フィクションとしての天皇 (第33回)

覆されるイメージ

 今回から第8章が始まり、摂政としての代理的立場ながら、天皇としての実務への本格的な関わりが開始されます。
 昭和天皇のイメージとして、これは私のものですが、温厚で学者肌で、戦争への加担についても、軍部の独走に天皇はただ追随するしかなかった、というものがあります。そしておそらく、日本人のほとんど誰ものそれも、これに近いものであると思います。
 そういう意味では、そう定着した昭和天皇裕仁のイメージについて、それを根底からくつがえす、この原著者バーガミニの著作の核心のひとつの展開が、いよいよこうして始まります。
 これまでの記述でもその片鱗はうかがえましたが、これから展開される裕仁という人物は、我々が抱いて来たような、控え目で能力的にもさほどではなかった高貴人であったどころか、抜きん出て優秀な指導者で、軍部の独走はおろか、それこそ自らその先頭に立って、アジアの征服と君臨の計画を指導し、実践た人物であったことです。
 本連載のタイトルである 「ダブル・フィクション」 というそのダブルな虚構の一つ目は、こうした、私たちの常識までにも定着させられたイメージが、じつはフィクションであり、作りものであったというところにあります。
 ついでに言っておきますと、そのダブルの二つ目は、敗戦をへて、その誤ったイメージに基づいて作られてきた戦後日本の国家としてのイメージにも、捏造されたフィクションが深く絡まっているというものです。
 ともあれ、今日の日本を考えるにあたっては、どうしても、いったん大正末から昭和の始まりに立ち返り、裕仁の時代が一体何であったのか、再度、考察してみる必要があることです。
 そういう脈絡で、その一つ目の虚構が、これからいよいよ解き明かされてゆきます。
  
 では、今回もその訳読にご案内いたします。
 
 (2010年10月14日)



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