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<連載> ダブル・フィクションとしての天皇 (第41回)
方法としての天皇制
昭和前半の日本を飲み込んだ日中・太平洋戦争が、西洋列強に包囲されて止むにやまれずに立ち上がった受身の防衛戦争では決してなかったことは、これまでの
「訳読」 で明らかとなってきています。
しかし、当時の帝国主義諸国間の相克のなかで、日本もそれに対峙する何らかの行動を必要としていたのは確かで、そういう意味では、日中・太平洋戦争は 「防衛戦」 であったと言えるところがあったのかも知れません。
そして、ことに勢いに乗る英米と比較して、近代的民主主義制度の定着に遅れを持つ日本として、それらへの対抗に効率的に対処しうる方法として生み出されたものが、明治以降の、近代的天皇制――立憲君主制の見せかけをもった専制主義――であったと見れます。
そうであったがゆえに、その専制主義と、たとえ 「防衛戦」 であろうとも戦争への突入という結合は、ファシズムの形をとらざるを得ませんでした。しかも、意志決定という意味では、極めてあいまいな方法を通じて (この点はこれからますます明らかにされてゆくでしょう)。
その近代的装いと専制主義の間の矛盾の表れが、この訳読の中で回を増すごとに明らかとなってきているように、西園寺と天皇の間の確執です。また、誰だって避けたいに違いない戦争へと、平和主義な国民を好戦的な国民へと誘導してゆくプロセスも、そうした訳読のなかから浮かび上がってきています。
ところで、翻訳上の誤りの訂正をしなくてはなりません。
これまでの翻訳で、枢密院と貴族院を混同して訳している個所がいくつかありました。
今回の更新で、誤りと思われる個所をすべて訂正しました。ことに、9章最後の 「戦前日本の政府構成」 においての、枢密院と貴族院の個所にご注意ください。
それでは、いつものように、 「ダブル・フィクション」 ストーリーにご案内いたしましょう。
(2011年3月6日、9日一部修正
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