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<連載> ダブル・フィクションとしての天皇 (第91回)
早くも始まる敗戦準備
今回の訳読部分で重要だと思われる部分は、著者のバーガミニは淡々と記述しているのみですが、敗戦準備として、天皇の国事遂行上の関わりの形式上の分離措置があります。すなわち、敗戦後に喧伝されるようになる、いわゆる
「軍部の独走、天皇無知」 論を下準備する、はやくも開戦一周年の時点から用意され始めた敗戦工作のひとつです。
それは、それまで、御前会議として宮廷の公式会議と取り扱われてきた軍部と政府の連絡会議が、それ以降、 「御前における政府・大本営連絡会議」 (
「大戦一周年」 の節の半ばを参照) と改称され、宮廷の公式記録に残されなくなったことです。
つまりこれ以降、天皇と軍部とのやり取りは、軍部側の記録には残されても、宮廷の記録には、何らの痕跡も残さなくなったわけです。むろん、降伏前夜、その軍部関係の記録はことごとく焼却されましたので、かくして、天皇にまつわる一切の公式記録が無くなることとなったわけでした。真珠湾から一年目の日の翌日のことです。
では、「崩壊する帝国」(その2)、へご案内いたします。
(2013年5月19日)
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