これは二者択一問題か

   私の健康エコロジー実践法 =実遭遇編= (その2)

 

Day 5

生検結果の信頼性を疑わない限り、ガン細胞が発見されたのは確かなのですから、“理念的なそもそも問題”はそれはそれとして、遭遇した現実をつぶさに受け入れ、実際的判断を下すべきと考えろ、とするものがあります。

つまりこの目下の問題とは、その道のエキスパートが勧める全摘手術を信頼し、それによって「得るべきもの」と「失うべきもの」の収支が、入手可能な現実条件に照らして妥当なものであるのか否か、という発想をすべきではないのかというものです。

この発想に立てば、「得るべきもの」とは、8割から9割の確率で得られる完治と、訓練の必要はあるものの前立腺肥大による排尿障害の改善です。

他方、「失うべきもの」とは、ED(勃起障害)の発生と射精不能となることなど、性生活機能の事実上の喪失です。低い可能性ながら、排尿障害の悪化もありうる。それに、経済上のコストもこれに加えておくべき項目でしょう。

さて、これらのプラス・マイナスは、自分の今後に予想されるQOL(生活の質)との関係において――それも願望値というより実務値として――、それを選択するに値する順当なものであると見れるのかどうか。

ここで厳密に見ておくべきことは、完治率8~9割とは、残りの1~2割が、完治しない率ということであって、その割合での即、死亡率ということではないことです。いわゆる取り切れなかったガン細胞が、その後も繁殖を続け、それが転移するなどして、最終的には死の事態も起こりうるということです。

そういう意味では、最終的な死亡率は、数字上はかなり低いものであるでしょう。

私も最初、ガンと聞いて、ことに友人の喉頭ガンの告知から死までの数か月間を思い浮かべて、この1~2割を、それに相当するほどの危険率を伴うものと、相当の恐怖感をもって受け止めさせられました。

 

(告知日には、発見されたガンがどういう性格のものか、「slow cancer」という言葉以外の説明はありませんでしたので、その3日後、専門医に再度の面談を申し入れ、それが4月7日に予定されています。問題が問題なだけに緊急の日時を求めましたが、それでも2週間半先。もしこの17日間をこの恐怖感をフルに抱いたまま過ごさねばならないとすれば、このストレスは重大かつ増悪要因的です。専門医の忙しさは事実でしょうが、オーストラリアでは――これは非医学的知見ですが――、あえてその数を少な目にコントロールし、その職能の地位の低下を防いでいるのが、医師などプロフェッショナル組織の政策です。彼は全豪医師会のメンバーのはずです。)

 

そこでですが、「実務値」として見たそうした「得るべきもの」と「失うべきもの」の収支ではあっても、かなり確かに発生する性生活上へのダメージは、果たして、それほどドライに受け入れ可能なものなのでしょうか。むろんそれは、もともと大いにプライベートな領域であるだけに、個人やその人の人間関係の内容次第によって、選択の分かれる問題ではあるでしょうが。

たとえば、すでに手術前から性的に孤独な生活に入っていた個人にとって、もはやすべてが言わば“空想域”に至っており、臓器上のダメージや不能自体はさほど痛いものではないでしょう。他方、先に述べたように(「タナトス・セックス」参照)、エロス・セックスの後にくる“二周目人生”の性生活に移っている人たちにとって、その機能はもはや役目を終わらせたものと見なせるものなのでしょうか。むしろそれが、たそがれながらも生きているがゆえに、いっそう切実なファクターとして、そのQOLに意外に繊細で深い色合いを添えているのではないでしょうか。

そうした諸要素を総合的に勘案して、こうした取捨選択をはっきりさせた判断が問われているのではないか、とするものです。

 

Day 7

Day 5の実際的視野にも目を配り、あれやこれやと思案をめぐらせている時、当地の新聞に以下のような記事が掲載されていたのを発見しました。

 

              手術を避ける前立腺ガン患者

医師たちの話によれば、ダメージの可能性がある手術や放射線治療を避けるため、自らの前立腺ガンの監視を続ける道を選ぶオーストラリアの男性が増えている。

また、危険のない前立腺ガンの「過剰診断」を認める医師も増えており、泌尿器専門医も、低度ないし中度の危険の前立腺ガンをもつ男性が、治療を受けることを避け、それに代わって、より詳しい持続的監視を選ぶことが増えている。

ビクトリア州では、2008年から2012年の間に前立腺ガンを診断された6,221名の患者のうち、その15パーセントにあたる912名が、失禁や性交不能というリスクを伴う手術や放射線治療といった根治療法に背を向ける決定をしている。

その代わりにその912名は、「能動的監視」プログラムを選んでいる。これは、通常、3ヶ月ごとに血液検査を受け、ガンの成長が疑われる場合、1年から3年ごとに生検を受けるというものである。そしてもしそれで成長が発見された場合、治療の開始がすすめられるというものである。

ビクトリア州前立腺ガン登録――同州の約85パーセントの症例を掌握――のデータを分析したところ、「能動的監視」中の912名のうちの68パーセントは低危険度ガンで、25パーセントが中危険度ガンであった。

ガン診断後の一年間で、低危険度ガン患者の12パーセント、中危険度ガンの18パーセントが治療を受けており、その過半数は手術である。

オーストラリア・ニュージーランド泌尿器学会の副会長、マーク・フライデンバーグ教授は、「能動的監視」を選ぶ率の増加は、手術によって2パーセントの確率で起こる深刻な失禁や、年齢に左右されるが30から60パーセントの確率の勃起不能の危険を避けたいとの希望を反映したものだと言う。

放射線治療も、勃起不能を起こしたり正常な膀胱機能を乱す恐れがあると同教授は言う。

(中略)

フライデンバーグ教授は、「患者は3ヶ月ごとに血液検査を受け、通常、6ヶ月ごとに泌尿器科医師と面接する必要がある。そして12ヶ月後、生検を再度受け、もし12ヶ月で進行が見られないなら、その後は、3年おきの生検でよい」と語る。

「つまり、継続する監視を行い、それに従っていればよい。」

同教授は、今週、ブリスベーンで開かれる同泌尿器学会の年次学術会議にデータを発表する。「能動的監視」中の患者は、自分のガンが成長するかもしれないとのストレスや不安を経験するが、そのほとんどはうまく対応している、と言う。

さらに、オーストラリアで「能動的監視」にある患者のガンが成長していた場合、それが手遅れになっていたとの証拠はない、とも言う。

「低危険度前立腺ガンで死ぬ危険度は、10年間で最大でもわずか2-3パーセントである。また多くの研究が示すところでは、直ちに手術をしても、後になって手術をしても、この2-3パーセントという率に影響は与えない。」

(3月18日付、シドニー・モーニング・ヘラルド紙)

 

この記事が掲載されたのは3月18日、 つまり、私がガン告知を受けたまさにその日でした。

この偶然の一致は、私にとってはなんとも意味深長です。つまり、これが「セレンディピティー」的というのでしょうか。

また、この記事の意味するところによれば、もし私のZGが低危険度のものであったとすれば、全摘手術とは、わずか2-3パーセントの10年間死亡率の危険を避けるためにおかすリスクということになります。

かくして、私が覚悟を固めつつあったその「孤軍奮闘」ですが、少なくともオーストラリアのビクトリア州に、すでに912名もの友軍がいたことが明確となったことです(オージーも捨てたものではありません)。

 ということは、私の考えていたことが、まんざら見当外れでないどころか、医学的にも、ひとつの新たな現実的進路を開くこととなっている選択(能動的監視)と、軌を一にするものを、孤軍奮闘ながらつかもうとしていたということになります。 

 

Day 9

Day 7に発見した新聞記事が伝えるように、そのように(4月7日の専門医との再度の面談に先だって) 明らかになった医療事情によれば、結局、全摘手術は、少なくとも私の今の段階では(7日に専門医より、危険度の高いZGとの見解を得る可能性がないわけではありませんが)、一般的に言って、急いで手術に臨む必要のない公算は大きく高まってきています。

ということは、全治かダメージかと、何も、二者択一をする必要のあるものではなく、かなりの確率で、ZGの無害化と性機能の維持の両立が可能であるということです。

むろん、7日での確認を待つ必要はありますが、すでに「slow cancer」との診断は聞いており、それがいきなり深刻なケースに急転する恐れはまずないと推測されます。

 


 

  

      

          この1ヶ月間のエクササイズ・ログ

03月07日(金) 自・電車通勤 自転車走行   8km

03月08日(土) 同 自転車走行        8km

03月10日 (月) 水泳  1,500m    37分20秒

03月11日 (火)  はじり  10km    1時間10分12秒

03月12日(水)  水泳  1,500m    35分55秒

03月13日(木)  はじり  10km    1時間12分09秒

03月14日(金) 自・電車通勤 自転車走行  10.8km

03月15日(土)  同 自転車走行        8km

03月17日(月) はじり  10km    1時間09分22秒

03日18日(火)  (前立腺ガン告知)

        水泳  1,500m    37分27秒

03月19日(水) 散歩         約1時間半

03月20日(木) 水泳  1,400m    34分45秒

03月21日(金) 自・電車通勤 自転車走行  11.5km

03月22日(土) 同 自転車走行         8km

03月24日(月) はじり  6km                42分32秒

03月25日(火) 水泳  1,600m    39分20秒

03月26日(水) はじり  10km    1時間13分19秒

03月27日(木) はじり  10km    1時間09分23秒

03月28日(金) 自・電車通勤 自転車走行 11.5km

03月29日(土) 同 自転車走行                    11.5km

03月30日(日) はじり  10km    1時間10分46秒

03月31日(月) 水泳   1,500m    36分05秒

04月01日(火) 散歩           約30分

04月02日(水) はじり  10km    1時間08分49秒

04月03日(木) 散歩         約1時間40分

04月04日(金) 自・電車通勤   雨天のため 0km

04月05日(土) 同 自転車走行         8km

04月06日(日)  

 

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