これほどの「“絶妙”マッチ」になるとは

修行風景 中堅編(その14)

店は、「ゴー・ミヨ」掲載以来、来客数にさほどの変化はみられないものの、常連さんたちの満足度が“心理的”に高まったようです。それは、「来るたびごとによくなってるね」とか「よその店では味わえないね」といった、これまでとはちょっと違った声かけに象徴されているように感じられます。

そうした中、再来週、私はニュージーランド行きで一週間(正味は三日)の休みを取ります。また先週には、募集をかけていたシェフ職に応募があって、一人が面接にきていました。結果は不採用だったようですが、やはり、私が居座って若い人たちの働く機会を邪魔しているのではないかと気にかかります。

そこで昨日は店主の「ダディー〔お父さん〕」――皆にそう呼ばれています――に、「どうぞ若い人たちを優先して採用してください」と申し出ました。「休みばかりをとってご迷惑をおかけしていますし・・・」とも付け加えて。

それに最近、ある程度は伸びてきていたつもりの自分の技量に、限界というか、ある散漫さみたいなものが見え始めてきたかのようにも感じられ、店の“お荷物”にはなりたくないなと考え始めさせられていたところでした。

彼の返事は、「いまは募集をしても、人がいないんですよ。応募があっても、インド人や中国人で、寿司ができると口では言っても全然うそ。まして日本人寿司シェフなぞ絶対無理。それに、忙しい週末だけパートで来てくれる人なんて居ませんよ。元さんには大いに役立ってもらってます」とのことでした。

私にとってはうれしい限りの話でしたが、店を営んでゆく上のむずかしさのにじんだ話でした。

それにしても、還暦のチャレンジで「寿司修行」を始めたこと、また、自分には週三日程度の軽減勤務が理想的であることなど、すべて「自己チュー」で決めたことばかりなのに、これほどの《“絶妙”マッチ》がありうるなどとは、予想すらできないことでした。それが相互の必要の微妙な接線をなしてこうして実現していることは、おおいに幸せな結果であるばかりでなく、偶然を手繰り寄せうるセレンディピティーも働いた成果なのか、とも思わされたりしています。

ところで、先週「ダディー」一家は引越しをしたのですが、その「引越し祝いパーティー」を、僕がNZ滞在中の月曜(店の休日)に行うというのが最初の話でした。そこで、日程が重なってしまって残念ながら出られないと話していたところ、昨日の話の際、「元さんが帰ってきた後の週に延期したよ」との変更の話もしてくれました。

今度のNZのトレッキング先近辺は、ワイン生産でも有名な地域です。おいしい現地ワインをお土産にして、そのパーティーに出席させてもらうつもりです。

NZトレッキングに続いて、重ねての楽しみというものです。

(2016年1月24日記)

 

 

 

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