「ボケ防止」どころか

修行風景=穴埋め働き編=その5

昨夜は、意義深いパーティーに出席してきました。私が「ボケ防止への第一プロジェクト」で修業した、その師匠のKazuさんが、引退後の生活を新たにするため、シドニーから北へ150kmほどにあるポートステファン湾に面して開発中のリタイアメント・ビレッジに引っ越す、そのお別れ会がありました。

集まった彼の弟子たち5人に、数人のゲストやその家族も加わりました【写真】。この5人の中に私も入れてもらっています。そういうことで、この集まりは数年ぶりの「同窓会」でもあったのです。むろんその同窓生の中で、私だけが一世代上の高齢者で、他は40歳末から50歳代のまさに現役で活躍中の店主たちです(Kazuさんは私より6歳下)。

後列中央の空色シャツ姿がKazuさん。私は前列左端。

弟子のうち、私を除いて一番年長のHさんは、もう成人になった二人の息子を持ち、シドニー西南部の住宅地域に構えた店は、固定客も増えて大いに繁盛し、日本で修業した香港人の板前に店のほどんどを任せられるようにもなって、ようやく余裕が見え始めて大旦那風の面持ちです。

ほぼ同年齢のMさんとGさんは、まだ小から中学生の子育て中の世代です。

Mさんは、シドニー市内に近い古い住宅地帯の一角に再開発された高層住宅区域内に店をもち、今ではその開発も完成して入居者で埋まり、若い世帯を中心にした固定客を持てるようになっています。

Gさんは、同窓生の中で、事業規模としてもっとも成功していて、今では4件の店をシドニー南西部に展開するチェーン店オーナーです。寿司とラーメンを組み合わせた業態が当たり、ことに中国人客をつかんでいて、一番の羽振りのよさです。

一番若いYさんは、一度ニュージーランドのクライストチャーチに店を構えていたのですが、2011年の大地震で店が崩壊、NZを断念してシドニーに移転、今ではGさんの店のひとつを任されています。

こうした同窓生の中で、いかにも特異な存在が私で、週三日ながら一応の現役という面では同窓生に並びながら、他方、共にリタイア・モードに入っているという面では、Kazuさんにも近い生活スタイルです。そうした二面性という面では、私の持論である「両生生活」も、こんなところでも実施されていました。

 

そこでのエピソードなのですが、このパーティーへの招待客の一人で、Kazuさんの1987年の開業以来の長い常連客だったSさんは、オーストラリアで展開してきた自分のビジネスも売って、いまでは悠々自適のリタイア生活を送っています。その彼が、私を、他の4人よりは年長でも、その外見から自分より年下と見ていたようです。それが、交わす話題の中で、年下どころか、けっこう年上であることを知って、「そうは見えない、実に若い」といって驚いていました。

Kazuさんが2004年に当地で出版した本。サイン付きで頂いた私の大切な蔵書の一冊。

こうした人間関係は、私にとっては、寿司修行を通じてこの十年で出来てきた比較的短期のものなのですが、十年前に一発奮起していなかったら、絶対にありえなかった関係であるばかりでなく、食という文字通り生なフロフェッションにたずさわる極めて人間くさい分野での交流関係です。

言わば「六十の手習い」から始まったこうした職業的《新次元》が、私の人生へも《新次元》をもたらしてきていることは確かで、そういう意味では、「ボケ防止」どころか、新しい人生経験の創出でもありました。

加えて、こうして広がっている新人間関係が、若い世代からの新鮮な刺激をもたらして、私にとって、世代をまたぐ視界の獲得となっています。

もし私に子供があれば、それは家族内でもつちかわれた体験でしょうが、遅ればせにして、こうしてようやく、私はそうした広がりを楽しみ始めています。

今後も大いに広げて行きたいものです。

 

 

 

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