前回、私たち誰もに共有な生存要件をもった個体を、「量子」や「素粒子」と並ぶ同列な一単位とみなし、《ヒューマン子》と名付けました。

むろんこの《ヒューマン子》という概念はきわめて抽象的なもので、物理学が対象とするような、特定の物的実体を対象とするものではありません。

私はしかし、それがそうした漠然とした概念でいいと考えています。むしろ、そうした相互浸透性をもったホーリスティック(全体的)な概念だからこそ、その可能性を持つものだと期待できます。

というのは、5章で述べたように、主観と客観あるいは科学と宗教といった、それまでの二元論的な物理学の枠組みが揺らぎ、また思想的には、西洋のそれと東洋のそれとの融合が静かに必要視されるといった、既成の学問的、思想的枠組や境界が問い直されてきたこの一世紀ほどの《時空認識》の変化に注目するわけです。言い換えれば、そうした旧来の学問的なり思想的なりの伝習を破って自在に羽ばたく、むしろ、そうした発想こそが必要とされていると思うからです。【続きを読む