オーストラリアは、日本ほどの深刻さはないものの、高齢者人口はじわじわと増加しています。いっぽう、その経済状況は先進諸国内では異例に順調なため、労働力不足の問題が深刻です。そこで政府は、高齢者に継続して労働市場にとどまるよう、年金支給開始年齢を引き上げたり、強制年金制度の対象を広げたり、年金積み立て補助や減税処置を与えたりして、その奨励策を強めています。
下の最初のグラフのように、65歳となった人口は、18歳となった人口に対し、その割合を増加してきています。2011年では70パーセントなかばで、長期的には同等に接近してきています。つまり、労働市場から去る人口と入る人口が、だんだん、バランスしようとしています。
第二のグラフは、過去十年間の労働人口の変化を国別に示したもので、日本やヨーロッパ諸国が、労働人口の減少に入っているのに対し、オーストラリアは、まだかろうじて、増加を示しています。また、第三のグラフは年齢ゾーン別の今後20年間の人口増加率を予想したもので、ベビーブーマー(団塊世代)の高齢化を反映して、65歳以上人口ゾーンの高い増加を示しています。
このように、オーストラリアの高齢化は、まだ若年人口の増加とバランスして、労働力人口全体の減少には至っていませんが、65歳以上の人口の増加とその大量リタイアによって、労働人口の停滞が心配されています。
そこで政府は、ひとつは、公的年金支給開始年齢を、65歳から67歳へとすでに引き上げました。次に、現在、労働している人は賃金の9パーセントが強制的に個人名義の年金に積み立てられ、これは政府と使用者の半々負担です。その対象を75歳にまで引き上げ、またその率を2020年までに、12パーセントに引き上げる計画で、現在、国会で審議中です。第三は、現在、自前の資金をこうした年金積み立てに加えた場合、その額は税金対象収入から控除でき、それと同額(現在は千ドルまで)が政府から支給されて積み立てられます。この政府支給金対象者を2013年から、75歳以上へと引き上げる法案があわせて審議されています。
資料出所: 3 November 2011, Australian Financial Review.
(2011.11.4)
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