9月17日に行われたニュージーランドの総選挙は、ほぼ完全雇用状態を示す好調な経済状況のもとで、与党労働党(緑の党との連立)が掲げる収入再分促進配政策か、野党国民党が掲げる減税か、をめぐって争われました。開票結果は、総議席数122のうち、労働党が50、国民党が49と、与党が1議席リードしているもののきわどい接戦で、労働党単独では過半数にとどかず、前期のように、他党との連立の交渉が続けられています。
27日現在では、緑の党が連立に合意したため、前期に引き続く、労働・緑の連立政府が成立するのは確実な情勢となり、連立交渉はまだ続く模様ですが、ヘレン・クラーク首相が3期連続して、政権を維持してゆくこととなりそうです。
上記両党以外の獲得議席は、NZ第一党7、緑の党6、マオリ党4、統一未来党3、ACT党2、革新党1、となっています(下図参照)。
【Australian Financial Review紙、2005年9月19日号より】
人口わずか400万人のニュージーランドは、1893年に世界で初めて婦人に投票権を与えた国で、その翌年には、労働争議を解決する強制仲裁制度を取り入れ、1898年には貧困層高齢者に年金制度を導入するなど、福祉政策国としての先進的位置を樹立してきました。
元英国植民地であったことから、長くその強い影響化にありましたが、1973年の英国のEU加盟により、大きな輸出先を失ったため、独自の方向を探ってきています。
その顕著なものは、1970年代半ばからの厳しい不況のなかで、元労働党首相ランゲ氏(1984−89)が口火を切った、経済活性化のための自由化政策(民営化や資産売却、NZドルの変動相場制への移行など)や、その一方で非核化政策も導入、米国の原子力艦船の入国を拒否、また、南太平洋で核武装活動を行うフランスとの間でも緊張関係を生みました。また、このクリーンでグリーンな環境重視太平洋島国々家を目指す政策は、世界で初めての京都議定書署名国となったことにも現れています。
1999年の初就任以来、3期目の首相を勤めることとなったクラーク氏は、こうした新自由主義的政策に批判的で、ビジネス界からの不満を呼んでいますが、改革推進には熱心で、開放経済政策も堅持してきています。
今回の選挙結果は、こうしたビジネス界からの批判と一般国民の支持との間の、微妙なバランスを反映したものといえましょう。
なお、こうした政治・経済政策の推移の結果、ニュージーランドの特徴のひとつとして、同国の最大の企業が、フォンテーラ(Fonterra)という、協同組合基盤の酪農製品企業であることがあげられます(上場最大企業はNZテレコム)。同社は、アジア経済の成長に注目し、現在、アジア市場への進出を精力的に進めています。
また、同国は、食品関係を除き、国内に製造業の基盤をほとんど持たないため(ヨット造船は世界一級)、自動車や電化製品などが同国内では比較的高いことも特徴です。一方、OECD諸国のなかで唯一、キャピタルゲイン税がなく、また、相続税も資産税も、印紙税もなく、投資家には、天国のような一面もあります。
(2005.9.28)
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