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    紙一重の違い



 まずは、ちょうど二年前に掲載した、「日本人に生まれてよかった」 と題した以下の記事を、再度、ご覧いただきたいと思います。

 去る6月19日、私のオージーの友人で、やはり、ベトナム帰りの元兵士、アンディーが、59歳の生涯を閉じました。彼は、のどに生じた癌が全身に転移し、長い闘病をへて、その二度目の戦いに、今度は生還することなく終止符を打ちました。私も含め、彼の癌は、ベトナムのジャングルに散布された枯葉剤に含まれる発ガン物質によるものだと考えています。ベトナム戦争が――より正確には、ベトナムへのオーストラリアの参戦が――彼の人生を変えました。

アンディーを偲ぶメモリアル・カードより

 彼は徴兵カード (国民の適合者リストからランダムに必要数が選ばれ送付されたといいます。つまり、彼はくじに当たったわけです) を受け取るまで、建設産業で働いてきており、積極的な労働組合員でした。
 この4月の末、私の別の友人の携帯に送ってきたテキストメッセージ (のどを侵されて話せないため) に、あと数ヶ月の命と宣告されていた彼は、こう書き残していました。

 そして、6月25日に行われた彼の葬儀の席上、私はある思いがけない発見をしました。彼の誕生日が、私と同月同日で、一年だけ私が先でした。私は、生涯で初めて、同じ誕生日を持っている、しかも同世代人と出合っていたのでした。
 出生地がたとえ北半球と南半球に隔たっていたとして、それが何でしょう。
 葬儀の一席をうめながら、またしても、紙一重な違いの感、を強くしていました。
 
 (松崎 元、2007年6月30日)

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