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    修行第二十二風景


 幾度も触れていますが、この修行の世界は、若者たちの世界への仲間入りです。
 先週より、週末を担当している韓国人の若い寿司職人が一時国に帰ったため、私が一週間ぶっ通しで寿司バーに立っています。木曜日までは経験済みでしたが、週前半の暇な日と比べると、その倍以上の忙しさとなるこの二日の体験はそれは大変なものです。ともあれ、職人の世界では、人が居なくなった時が、自分の経験を広げるチャンスなのです。
 その際、二人でチームを組んで仕事をしている先輩――といっても三十歳代半ばですが経験は十年以上――から叱られることも度々です (ことに私は身の回りのことにずぼらなところがあり、それが仕事、ことに後片付けなどに表れます。そこを几帳面な彼から躾けられてもいます)。もう、一刻の猶予もおけないぎりぎりの忙しさのなかで、彼にもプレッシャーは高まっており、ちょっとのスピードダウンや滞りも、彼にはいたたまれないのです。
 そうでも、ひと仕事を終えてリラックスすると、普段の打ち解けた間柄がもどってきます。
 また、キッチンの板長は、日本の著名ホテルでの修行経験も持つベテランですが、年はまだ四十代半ばで、話をしていると、やはり世代の違いを感じさせられます。
 ウエイトレスの女の子たちは、それこそ私の子供たちに当たる年頃ですが、先日も、暑い日だったので自転車専用のパチッとした短パンで出かけてきていたのですが、仕事を終え、それに着替えたところ、 「はじめさん、セクシー」 といった声がかかります。
 毎日、そのようにして一緒に仕事をしていると、彼ら彼女らとの、年齢や世代の差といったものは少しも感じなくなります。もちろん、話題も違いますし、興味も異なり、違った世界はあります。そうではあるのですが、互いにそれぞれの気心もわかってきて、それを包み合って忙しさを克服している呼吸は、同じものであり、共に通じ合うのです。もちろん、国籍の違う同士であってもです。
 またそれだから、以前には予想も考えることもできなかった、自分の気力やエネルギーも湧き出てきているのかも知れません。

 ところで、ついに、10,000キロを達成しました。昨夜の、9月25日午後11時15分です。それも、帰宅途中の我が家まであと100メートルほどの曲がり角で、メーターの 「9999」 という文字が一斉にゼロに変わり一桁上に 「1」 が出ました。別にそう意図も計画もしていたわけでもないのに、その一万キロメートルの区切りが、わずか百メートルの誤差で我が家に的中するとは。精度にすると十万分の一ということになります。百メーター先の直径一ミリの的に当てる正確さです。偶然とはいえ、これはすごい。
 そういう次第で、家に着いた時もメーターの表示はまだ変わっていませんでしたので、さっそく記念の写真を撮りました。
           


 (2008年9月26日)

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