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私共和国 第12回
当地の飲食業界に関わるようになってもう3年近く、そこに出入りする人たちの傾向もだんだん見えるようになってきました。
いずこでもそうでしょうが、飲食業という労働集約型サービス産業の担い手はやはり若い人たちです。私もそうした世代違いの人たちに交じって働いてきていますが、最近になって、ますますと深まる、ある思いがあります。
経験上、日本食関係に限っての話ですが、そこで働く、つまり、ワーホリや学生ビザでやってくる日本の若者たちの傾向について、オーストラリアにやってくる理由は、もはや見聞を広める旅行などではなく、より良い仕事や生活のため、となってきていることです。つまりは、日本を出る動機は、先進国型から後進国型に移ってきているように思われます。
視点を変えれば、オーストラリアの飲食業界の労働コストを引き下げるため、海外からやってきて、当地の基準賃金以下で働いてくれる人たちは、非公式ながら、有用でウエルカムです。たとえばワーキングホリデー制度でみれば、そういう必要と、オーストラリアに旅してみたいという先進国的な動機の結合が本来の形であったと思うのですが、それが、来豪の目的は、もう旅ではなく、そこにいい働き口をみつけ、できれば定住したいというものに変化してきている中でのワーホリ制度になってきていることです。
日本の若者たちについても、本来の旅行より、働き先を目当てとする動機が切実であればあるほど、受け入れ側としては、安い労働力へのいっそうの期待となり、日本が、もはや労働輸出国化しつつある現状が指摘できます。
そうした日本の若者たちの一人ひとりと話をしてみても、彼ら彼女らの切実さは増すばかりで、時には、アジアの他国にも勝るとも劣らないハングリーさすらも感じられるようになってきています。それに、すでに日本時代でかなりな時間を浪費させられ、あるいは、オーストラリア渡航費用をねん出するために相当な時間を割いてきているためか、すでに二十代末になっている者も多く、そうした自分の年齢に、一種のあせりを感じている様子さえ見受けられます。
日本は、物的資源は乏しいものの、人的資源には恵まれ、それがゆえに優れた輸出品を生産できるとされてきました。そういう国が、若い労働力を輸出し始め、製造業製品の輸出にもかげりが出ているとなると、いよいよ、その国の根本的見直しが必要なのか、ということになります。
(2009年1月14日)
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