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熱力業風景
(その7)


いよいよ始動


 私たちにとっての重要な客先の一社である大手の建設会社、LO社が、イクシス・プロジェクトの建設村とLPG貯蔵用のタンク4機の受注に成功しました。合わせて1千億円ほどの仕事です。
 イクシス・プロジェクトには他に、洋上に、海上生産・貯蔵・出荷施設 FPSO (Daewoo Shipbiliding & Marine Engineering が受注、金額未詳)、海中施設 SURF (McDermott Australia、US$2 billion)、洋上処理施設 CPF (Samsung Heavy Industries、US$2.71 billion) があり、陸上には、仮設施設(Leighton, Au$94 million)、敷地造成(Mcmachon John Holland JV, Au$340 million)、機器荷揚桟橋(BAM Clough JV, Au$140 million)、製品出荷桟橋(BAM Clough JV, Au$370 million) があります。
 ちなみに、洋上施設に、ビリオン・ドル(千億円)単位、地上はミリオン・ドル(億円)単位の受注金額が見られるように、地上施設に比較して、洋上施設の桁違いの規模の大きさが見られます。これこそ、予想されるオーストラリア国土上の工事にともなうコスト高と工期遅延を避けて、出来るだけの工事量を、洋上に持って行った努力の結果です。
 こうした各工事の総体が、総額 US$34 billion、2016年出荷開始予定のイクシス・プロジェクトです。

 こうして、当社の重要な顧客のLO社の、地上施設の工事が始まることとなります。
 そこで、当社も、その実務上の分析や準備に入っているのですが、ともあれ、状況はオーストラリアの国が始まって以来の資源メガプロジェクトブーム下にあり、何が起こってくるか、事態はまったく予断を許しません。
 たとえば、 「豪州、技能労働者の確保急ぐ LNG開発で人手不足」 と、日経新聞 (6月4日電子版) でも報道されていますが、オーストラリアの資源関係のメガプロジェクトが、次々に動き始めている中、いよいよ、予想されている技能労働力不足の問題が、予想ではなく、現実として出現し始めています。
 5月末、日本の丸紅も出資する西オーストラリア州のロイヒル鉄鉱石鉱山事業 (Aus$6.5 billion) に、 「企業移民労働者協定 (EMA)」 と呼ばれる海外人材に優先的就労ビザを与える制度の第1号の適用許可が出ました。それは、同事業の鉱山開発、鉄道、港湾施設の建設に当たる1700人の労働力を迎えるためのものでした。
 ところが、この報道がされるや否や、各労働組合が一斉に反発しました。というのは、その発表に前後して、オーストラリア国内の金融、製造業などで、数千人規模の人員整理が発表されており、自国内に失業者をかかえていながら、外国労働者の輸入はないだろう、との強い反発となったものです。
 そこで政府は、自前の求人サイトを設け、こうしたEMAが許可される巨大プロジェクトの求人募集を一括して扱い、オーストラリア人労働者の採用を優先し、それでも不足の場合のみに限り、外国人を使うとの対策にでました。
 これに、企業側は、すでにそうした準備はしてきており、重複した扱いとなるばかりでなく、人手不足はすでに発生している現実の問題であると強い難色を示しました。ことに、事業の融資契約には、リスク要因のひとつである人手確保に不安はないことを投資者側に事前に納得さねばならず、それが後手に回るのは頭痛の種です。このひとつのプロジェクトだけでも、こうした大騒ぎな事態となっており、この先が思いやられるというのが実情です。
 そうした折、6月20日の報道によると、政府の求人サイトが、このロイヒル事業のために、その第一陣の126人分の雇用を募集したところ、6万人の応募があって、組合側の指摘が当をえた形勢となっています。むろん、この6万という数字は、初期的かつ異例なものではあるでしょうが、企業側にしてみれば、大量の移民労働力を使うことで効率的に事を処理したかった目算に狂いが出始めているのは確かです。
 こうして、EMAの適用が許されるには、個々の具体的職種のそれぞれについて、国内の募集で集めきれなかったとの証明を経る必要が出て来ており、いちいち、手間のかかる手続きが避けられなくなります。

 そこでの私たちの作戦は、労使関係分野での永年の経験と人脈を通じ、オーストラリア国内の上質な、下請け企業や人材派遣企業、そして、各労働組合の上部や、オーストラリアの労働組合の頂上団体である全豪労働組合評議会 (ACTU) らと連絡を着け、できるだけ早期に、事前の相互協力システムを、客先の事業内に構築しようとのものです。
 そうした相互協力システムとは、それぞれの機能の段階に応じ、プロジェクト全体レベルの最上部のものから、下請け工事業社レベルの下部のものまで、いくつかのレベルの体制が考えられます。
 ただ、今の段階では、まず、下部のレベルでの体制の樹立をめざして、各方面への “根回し” を続けています。

 (2012年6月21日)

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