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このところ、労使問題が生産に深刻な影響を与えるケースがアジア各国で増加しています。インドのスズキ、ベトナムでのキャノン、中国での部品メーカー、インドネシアの日系工場団地など、日本企業をめぐる事例だけでも、事態の広がりは深刻です。それぞれに問題の詳細は異なれ、低賃金で注目されたこうしたアジア各国の労働事情が、先進国がかってたどった道を踏襲して、より複雑な対応を要求しはじめている事情がうかがえます。
すでにお伝えしているように、オーストラリアの労使事情も、アジア諸国とは性格は異なるとはいえ、やはり、全般的な深刻化の様相は同じです。
まさに人間の問題が、いずれの国においてもしだいに浮上してきている情況が観察されます。
そのオーストラリアでは、労働党政府の連邦、主勢力が自由・国民連合となった各州政府という複雑な政治状況も反映して、労使争議頻発の動向が生まれはじめています。なかでも労働党連邦政府にとっては、労使関係政策の基幹である、労使関係制度の理念と現実とのバランスをめぐって、舵取りのむずかしい状況に追い込まれています。
とりわけ、世界情勢の影響をこうむり、低調化の避けられぬ経済全般の中で、それでも力強く成長を支えてきている資源・エネルギー産業においては、そのブーム状況を恰好の機会とする労組側の攻勢により、事態の膠着化のケースすらもまれなことではなくなってきています。
目下の私たちのかかわる 「熱力業プロジェクト」 においても、工事に着手した下請け建設業レベルで、やはり、関連する諸労働組合の強気な姿勢がみられ、その対応に困難が予想されています。
問題は、こうした好況状態を要求獲得の好機ととらえる労組側の動きを、いかにして、プロジェクト全体の利益とバランスのとれたものとさせてゆくのか、その采配をどのように組み立ててゆくかです。
いまのこころの労組側の動きは、各労働組合の方針を統合した組織的取組みというより、各組合のエゴの競争と言った傾向が顕著で、たとえば、全国組織のACTUが、そうした攻勢の指揮に当たっているという状況があるわけではありません。
つまり、労組側の動きは、強硬ながらも個別的です。そういう意味では、プロジェクト全体の進行をみすえた強固で一貫した取組みを実施すれば、そうした各組合の動きを取り込む組織的対応も可能であると考えられます。
プロジェクト遂行の契約関係にあっては、労使問題は各下請け企業の専任事項です。しかし、問題をそうした個別企業の対応のレベルに任せた場合、個々の企業の対応の力量には限界があるだけに、力で押し切られる場合も予想されます。
労使問題の原点に帰れば、それを対立問題としてとらえるのか、それとも、そうした対立を克服した協力関係を樹立し、その結果のより大きな成果を互いにシェアーしうる問題としてとらえるのか、その違いは明瞭です。
そうした、大きなビジョンでもってくくりながら、全体での一貫した体制を組み上げてゆくことこそ、この個別なプロジェクトの成功のために重要な要素ではないかと判断されます。
(2012年9月7日)
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