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<連載> ダブル・フィクションとしての天皇 (第56回)
80年を隔てて
本訳読は、日本が上海事変を何とかやり切り、日本の大陸進出に反発する国際連盟のリットン調査団を迎える場面に差しかかっています。
一方、国内では、日本の欧米との協調を図ろうとする勢力の抹殺が始まっています。三井総裁の団琢磨が暗殺され、いまや、犬養首相も暗殺される5・15事件の前夜となっています。
結局、ご近所付き合いと似て、狭いこの地球、お互いなんとか折り合いをつけてやってゆくしかないのに、時に、相手を飲み込めると思い込む人たちが登場します。
80年前、まだまだ地球は広い時代で、そのぶん世界は未熟でした。後参者日本は、もちろん未熟中でもまだ未熟で、国際連盟という “先取り者同盟” に歯向かって、釈迦力になっていました。
どこかが似ているように思えます。
それは、隣国、中国をめぐって、1932年当時と、今日の東アジア情勢です。
先週、オバマ大統領が彼として初めてのオーストラリアを訪れ、同国北部、ダーウィンへの米海兵隊の常駐を発表しました。来年の250名からスタートし、将来は2500名規模となるとのことです。
ダーウィンは、太平洋戦争勃発の際、真珠湾に続いて、日本軍が空爆を加えて町を壊滅的にさせた、南太平洋の戦略上の要所です。その際にダーウィンに投下された爆弾総量は、真珠湾へのそれを上回っていたといいます。
日本のメディアは、このアメリカの発表を、米国の 「アジア回帰」 として大きく歓迎しているように見受けられます。言うなれば、 “冷戦構造” 再来への歓迎姿勢です。さらには、80年昔へのノスタルジア的回帰です。
中国は、無論これを、中国包囲網の一環だと反発しています。ダーウィン対岸のインドネシアも警戒的です。
またしても、昔の未熟の時代に帰ろうというのでしょうか。
それでは、訳読の最新部へどうぞ。
(2011年11月22日)
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