専門職移民事情 - 会計士の場合
オーストラリアの専門職不足に対処するため、スキル移民の受け入れが拡大していますが、昨年度では、会計士が47.5パーセント増加して6,768人となり、最大の増加数となりました。

今年度(2005年7月から)は、スキル移民(Skilled Migration Program)の受け入れ枠が2万人拡大され、合計でほぼ10万人を見込んでいるため、いっそうの増加が予想されています。

今年6月末までの一年間に、スキル移民枠で受け入れられた専門職は、下のグラフのようになっており、数の上では、コンピューター関連の技師が最大数となっていますが、年間変化数は4.5パーセントの減少です。

その他、科学者、福祉専門化・アーティスト、看護士とも、25〜43パーセントの増加を示しています。

       スキル移民による上位5職種の移民数と年間増減(2004−2005)
          

この内、会計士にしぼって、最近の傾向を分析してみると、大学の会計学課程を卒業し、移民が受け入れられた数の年度別、出身国別の変化は、以下の表のようになっています。

        スキル移民により受け入れられた会計学士の年度別数と出身国
        
【注】ここでいう「スキル移民」とは Skilled Migration Program のこと。資料出典は、Australian Financial Review, 2005年9月6日号。

昨年のほぼ50パーセントの増加に先立ち、一昨年度では倍増していることがわかります。

こうした急増に伴う問題も発生しています。その第一は、英語を母国語としない国からの移民会計士が、必ずしもスムーズに職に就けていない現状があります。

オーストラリア公認会計士協会の調査では、2001年度、オーストラリア生まれか、英語を母国語とする国出身の会計士は、その75パーセントが、会計士か関連する仕事についていました。

これに対し、英語を母国語としない国出身の会計士は、同率が52パーセントで、19パーセントは、それ以外の職にも就かない失業者でした。

この6月に発表された同公認会計士協会のレポートでは、業界の一部に文化的、民族的偏見があることも一因だが、主な要因は、言葉の問題と、使用者が、英語圏出身者を優先的に採用する傾向があること、と指摘しています。

ある大手会計事務所の担当者は、「海外留学生は、大学で成績ばかりに関心を奪われ、もっと広い経験を求めることをしていない」と言い、そうした広い社会的経験不足が、仕事遂行上でもマイナスとなっていると指摘しています。

また、一部の留学生には、会計士学位を、永住権を獲得する手段とのみ考えている人がいるとし、学位の授与が必ずしも会計士不足の解消には役立たっていない現状がある、と批判しています。


(2005.9.10)

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