「両生空間」 もくじへ 
 HPへ戻る


      第30号発行を記念して


 この 『両生空間』 の創刊は2005年8月ですから、以来、2年5ヶ月で30号を数えることとなりました。
 長くもあり、あっという間であったような二年半でした。
 この間に掲載した記事は、あわせて80本近くにのぼり、その分野もさまざまにわたっています。
 今回、この節目を迎えるに当たり、あらためてそれらの記事をふり返って見たのですが、月ごとの積み重ねとは言え、よくこれだけ書き溜まったものだと、自分でも驚かされるものがあります。 「持続は力なり」 とは、こういうことを言うのでしょうか。と同時に、一歩々々広がってゆく世界に、まさにこの 『両生空間』 を始めた際のねらい――越・地理的 「両生」 ――が、確かに刻まれているな、との実感を深めています。
 また、ある読者からは、その書き溜まった諸記事について、年月順のバックナンバーだけでなく、分野別に整理したもくじがあれば便利、との声もいただきました。
 そこで、今30号の発行を記念して、別掲のように、 「テーマ別もくじ」 を作ってみました。どうぞご利用ください。

 このようにして、形の改められたそれらをひと目にしますと、ちょっとした、本のもくじを見るようで、それなりの達成感のようなものも湧いてきます。
 正直を申しまして、このようにものを書いてくるというのは、ある意味で、なかなか孤独な作業で、時には、闇に向かって独り言を続けている、かの感を強くすることもありました。
 しかし、読者のみなさんからいただく声は、私にとっては大変に励ましとなるもので、この間のこの仕事 (というには面はゆいですが) を支える、貴重な推進力となりました。深く感謝しています。
 お陰をもちまして、常連読者の方も、ゆっくりではありますが着実に増えているようで、このところ、確かな手ごたえも感じられるようになっています。
 自分でも、書くことが楽しさにも変じてきており、予感ですが、この2008年は、何か、飛躍の年になるような気もしています。
 ともあれ、いっそう充実した 『両生空間』 となれるよう、一号々々、つとめてゆく所存です。

 ところで、ホームページにもご案内しましたように、HP上段にある 「Google検索」 で本サイト専用の検索ができます。求める用語(キーワード)を入力 (空欄にその用語を打ち込んで 「Google検索」 ボタンをクリック) して、上記の 「テーマ別もくじ」 でも追えない、各テーマにまたがる相互関連がつかめます。それにより、ある 《立体的なイメージが共有されていただけるかと思います。
 というのは、私は、自分の表現法のひとつとして、一連の考えを述べた後、それに名前をつけて置くという、数字でいえば、10千を万というように、桁を上げるに似た方法をよく使用しています。
ですから、後の記述では、先で述べた内容の説明は簡略し (その都度、リンクはつけていますが)
、そのため、後の記述から入った場合には、理解しにくいという問題を生じています。こうした関連性は、 「バックナンバー」 や 「テーマ別もくじ」 ではとても追いきれず、いったん全部を読んでみて、その記憶を頼りに関連付けるという、手間や気力の要する作業をせねばなりません。
 そこで眼をつけたのが、この 「Google検索」 の借用です。たとえば、ひとつのキーワードとして、「メタ」 と入力しますと、本サイト内の4本の記事が表示され、それが扱われている “” 記事をみつけてくれます。まずそれらのイントロを読むだけでも、そのキーワードをもちいて表現された、本サイトならではの世界の輪郭をつかむ縁 (よすが) となります。そしてもし、その縁に関心を持たれたなら、当の記事に当たっていただければよいわけです。
 印刷出版では、そこまでの自在な 「索引機能」 を備えることは不可能で、これこそ電子出版の醍醐味のひとつかと思います。グーグルさん、ありがとう。

 余談ですが、ユダヤ教に、一種の経典である 「タルムード」 というものがあるそうです。広辞苑によれば、 「タルムード」 とは、 「ユダヤ教でモーゼの法律に対して、まだ成文化せずに十世紀に亘って口伝されてきた習慣律をラビ達が集大成したもの」 とあります。聞きかじり程度のことですが、この 「タルムード」 の各ページには、本文を囲み、まるで本の余白に書き込んだメモのように、その箇所と他の箇所に関係するさまざまな関連付けが表されているといいます。これは私の解釈なのですが、 「タルムード」 とは、ユダヤ人が代々にわたって築いてきた生きる知恵をそのように書き溜めたもので、ただ書き並べるだけではなく、読み手に理解しやすいように、その記述内容のいく様もの他項目との関連性を、そうして表示しているのではないかと推測しています。つまり、固定されたものですが、その編纂者たちがつくった 「Google検索」 ではないでしょうか。

 今回、こうしてテーマ別もくじ」 を作り、 「Google検索」 借用の案内もしながら、あることを発見しました。
 それは、こうして私は、自分の書いたものの並べ方として、(1) 時間系列順のバックナンバー、(2) テーマ別もくじ、(3) 「Google検索」 を利用した関連付けという、三方向クロスの 《掛け合わせ索引機能》 を、知らず知らずに作り上げていました。
 そもそも文章とは、改行や改ページはあるものの、もとはと言えば、一本の、長ぁーい、線状の世界です。つまり、
言葉で表現したり、またそれを読むこととは、その特定言語の文法が定めるルールによって並べられた諸単語による、そうした一本線を延々とたどることです。
 文章の世界とは、この一本線原則に従わないでは存在しえない世界で、言ってみれば、そういうなんとも拘束の多い世界です。しかし、表現には別の方法があり、絵画とか音楽とかといった、表現形態の根本的に異なる世界も存在します。つまり、表現したい内容とは、そんなひも状な世界に収まりきれるものではなく、それこそ、絵画や音楽にも並ぶ、もっともっと豊饒な世界のはずです。つまり、この一本線の不自由さを克服する、なんらかの方法もほしいわけです。
 そういうわけで、もくじといった一覧表は、そうした一本線の欠点を補う、絵画がそうであるような、いっぺんに全体を表すに似た工夫と言ってもよいでしょうし、 「Google検索」 といった電脳化された検索機能は、キーワードを手掛かりに、眼でその全体をくまなく当たり直すといった面倒な作業を、瞬時にやり遂げてくれるはずです

 そういう、一本線拘束打開策として、気がつくと、この三本立ての掛け合わせ目録機能》 が編み出されていたのですが、これらの三機能は、それぞれに興味深い世界を代表していそうです。
 もし私が小説家なら、第一の時系列順の表現に重きをおいたでしょう。それが生身な生活の実相です。また、もし私が学者なら、第二のテーマ別表現の代表とでも言える論文制作に骨折ったでしょう。そこに、 「Google検索」 というキーワードさがしの名人の手を借り、著しい数の各一本線をたちどころに走り回ってもらって、このくたばり始めたおつむの代役をやらせようとの魂胆です。(そういう意味では、若返りの妙法でしょうか。)
 その本人も、実のところ、この 『両生空間』 がどこに行こうとしているのか、よく見通せてはおらず、その意味では、こうした掛け合わせ目録機能》 は、その張本人にとっても、頼もしい助っ人になってくれそうです。


 (2008年1月8日)


 「両生空間」 もくじへ 
 HPへ戻る
                  Copyright(C) Hajime Matsuzaki  この文書、画像の無断使用は厳禁いたします