ブルーム
カナナラ
前回の記事に書きましたように、ブルーム (Broome) は、キンバリー地域への西の玄関です。人口は1万3千ほどの小さな町ですが、歴史ある真珠産業と近年は観光のまちとして知られています。
19世紀の末より、近海で大粒の真珠を産出することから、世界有数の真珠産業の町として栄えてきました。今日でも、町の中心には真珠店が立ち並び、また産出量の三割は日本に輸出されています。
この真珠産業の発展を支えてきたのが日本人。古くは明治中期から太平洋戦争まで、真珠採りで一攫千金を夢見た和歌山、大地をはじめ、四国、九州などから出稼ぎにきて、この地に潜水夫として住み着きました。
ただ、戦争の勃発により、敵となった日本人は強制収用され、また1942年3月3日には、日本軍による空襲も行われて、町と産業は一時、壊滅的状態に至りました。
今でも、町外れには日本人墓地【写真右】が残されており、潜水病やサイクロンと呼ばれる台風災害などで死んだ九百を越える人たちが、静かに眠っています。また、日本人の名を冠した街路もあり、町のあちこちに、日本人の足跡がしのばれます。
毎年、八月下旬には、日本語で呼ばれる「シンジュマツリ」が開かれています。
「月への階段」
ブルームの町は、北から南に垂れ下がったように、大陸から突き出た小さな半島の上にあります。そのため、町の西側には、インド洋に面し果てしなく伸びるケーブルビーチが、東側には、半島に囲まれたローバック湾をのぞむタウンビーチがあります。
満月の夜、このタウンビーチには、どこからこんなにと思うほどに、大勢の人々が集まってきます。その目的は、これから演じられる大自然のドラマの観客となるためです。
遠浅の湾は、沖のそのまた沖まで潮が引き、延々とした干潟となって、ドラマの準備をととのえています。
日がとっぷりと暮れたころ、沖の水平線上がほんのりと明るくなりだします。月の出です。
やがて待ちにまった月が現れ、暗い干潟上にその光がにさし始めます。丸い月がその姿を水平線上にあらわしきると、浮き水を残す干潟面にその姿が映って、まるで黄金の階段が月まで伸びているかのような幻想的な光景が出現します【写真左】。これが有名な「月への階段 (Staircase to the Moon)」です。
ビーチをうめた群衆は、その月と光のドラマに酔いしれ、おもわず感嘆の声をあげています。湾の上を渡るすずしい潮風も、このドラマを助演しています。
夕日を楽しむには
西に面したケーブルビーチは、インド洋に沈むちょっと不気味な色の夕日を鑑賞するには絶好の場所。近年は、その地の利を生かしたリゾートホテルも建設され、ブルームの新たな魅力として注目されてています。
ケーブルビーチと町は、夜おそくまでバスが運行しており、お急ぎの方は、夕日を楽しんだその足でバスに飛び乗り、タウンビーチへと移動し、「月への階段」を鑑賞するとの二本立ても可能です。
ラクダの背にゆられて、ビーチをゆっくりと味わうのも、また別の楽しみ方です。
ケーブルビーチというその名の由来は、昔、通信手段が電信に頼られていた頃、この浜からインド洋を横断する海底電線が敷かれ、英国本土との交信がおこなわれていたからです。
【サンセットまぎわのケーブルビーチを散策するカップル】
(2004.7.14)
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