心配される世界的住宅市場バブル
11月29日付のエコノミスト誌(英国)によると、住宅購入を安易にすすめる通説を正す時期がきたと、世界的にバブルの様相を示す住宅市場への警鐘を発しています。
図1 世界主要国の住宅価格の上昇率
(1997年から2003年第3四半期までの期間の年間平均住宅価格上昇率)
エコノミスト誌は、七つの通説を取り上げ、以下のように反論しています。
1 土地の供給には限界があり、住宅価格は値上りし続ける。
反論 1990年以降の東京の大幅な下落はその説が誤りである明確な証拠である。また、人口増加は確かに住宅価格のゆるやかな上昇の要因だが、20パーセントに達するような急激な上昇とは結びつかない。
2 利率の低さにより、住宅購入を安く行え、それが需要を拡大し、価格を引き上げる。
反論 現在、ローンの利率が低いことは確かだが、将来、利率が上昇した時には、収入における返済額の割合はうんと大きくなる。また現在のデフレ傾向の状況では、見かけの利率は低く見えるが、実質利率はそれよりも大きい。
3 住宅売買にはより高い取引経費がともなうため、住宅市場は株式市場ほどにはバブル化しにくい。
反論 住宅市場のほうがバブルになりやすいという研究報告がいくつも出されている。またIMFの研究では、住宅価格の急激な上昇は、株式市場のものより、大きな下落をもたらしやすい。
4 住宅は現物として存在するため、株より安全な投資対象である。
反論 この説は住宅価格の変動ということを考えておらず、バブルの頂点で買った不動産は、けっして「安全」ではない。それに、賃貸している場合では、住人が見つからなくなったら、収入はとたんにゼロとなる。
5 家賃を払うのは「捨て銭」であり、住宅は買って住むほうがよい。
反論 シドニーからロンドンまで、住宅の過剰な供給のため、ローンを組んで住宅を購入するコストより、賃貸住宅に住むコストの方が安くなっている。つまり、価格が上昇し続ける場合に限り、買うことに意味がある。
6 たとえ住宅価格が高すぎる状態であったとしても、その価格が下がることはおこりにくい。それは、住宅バブルの破裂をもたらすような、利率が二桁にまで上昇することはないだろうから。
反論 日本の例を再び取り上げれば、利率がたとえ大きく上昇しなくとも、価格の下落は生じうる。問題は市場の心理である。もし、家賃も上がらず、価格も下がり始めれば、投資家の売りがはじまる。
7 住宅価格上昇にブレーキがかかるとしても、それは値上りが止まる程度で下落にはならない。
反論 高いインフレ率の時なら、実質住宅価格はそのように推移するかもしれない。しかし、インフレ率が1〜2パーセントしかないような時では、住宅価格の回復には数年を要することになる。つまり、今日のような状況では、名目のみならず実質住宅価格の下落がいっそう起こりやすい。
図2 住宅価格の過剰値上り
図2は、2003年の平均住宅価格の平均収入に対する倍数値を、1975年から2002年までの同値の平均に対する上昇率で比較したものです。つまり、この値が大きいほど、家計における住宅費用負担が高いことを示しています。
エコノミスト誌は、この負担が、米国の主要都市を含め、ここにあげた諸国ではもはや限界に達しつつあり、これ以上の価格上昇は維持不能、と述べています。
(2003.12.14)
政治・経済 もくじへ
HPへ戻る