3700キロの上水用運河計画
世界最長河川のナイル川の延長の半分をこえる3700キロメートルにもおよぶ、人口運河の建設計画が西オーストラリア州でもちあがっています。乾燥大陸として水の悩みの多い豪州ですが、近年の人口増や異常気象も手伝って、西オーストラリア州はそのうちでもことに深刻。日本の七倍の広さをもつ同州ですが、その北部から運河でもって州をほぼ縦断、延々と首都パースへ安定した上水供給を果たそうとの計画です。
【西オーストラリア州北部の人造湖、アーガイル湖。州北部は年の半分は雨季で、降水量も多い】
この計画にはただ、政治的なウラもあって、計画としての現実性に疑問が呈されているのも事実。というのは、今月26日に予定されている州議会選挙向けに、野党、自由党からやや唐突の感をもって発表され、しかも、十分なフィージビリティー・スタディー(実行可能調査)もへていないという、選挙向け「打ち上げ花火」の要素もうかがえるからです。
ただ、パースの水問題を解決するため、州北部の水を引いてくる計画は、1980年代後半から論じられてきている長年の懸案でもあり、この問題は、誰かが、いつかは解決しなければならない難題であることは確かです。
皮肉なことは、80年代にこの計画実現の必要を力説したのは、当時の労働党州政府の資源大臣でしたが、やがて政権をとった自由党が、パース東部の巨大な地下湖の発見もあって、その計画を葬りさっていました。地下湖の水は、地質学的な途方もない長期間のうちに地下の砂層に貯まったもので、いったん使い切ってしまえばそれで終りのもの。いずれは、永続性のある政策実行が必要ではあったわけです。そうした経緯をへて、今回、その自由党からこの計画が出されてきたものです。
また反対に、これを迎え撃つ与党労働党政府は、水不足対策は、海水の淡水化によることが現実的としており、立場が入れ替わったも同然の成り行きとなっています。
この巨大プロジェクトに必要な資金は約20億〜100億豪ドル(1600〜8000億円)、送られる水の量は年2億トンと見積もられていますが、送られてくる水の使用料金については、発表した自由党側と、それを批判する政府側とで、6倍を超える差があります。その中間をとると、1立法メートル当たり3ドル(240円)ほど。東京の水道料(上水のみ)が同単位で140〜200円ですから、この中間値であるかぎりは、それほ高い料金ではなさそうです。
一方、労働党政府が推す脱塩プラントによる単価は、同単位で85セント(68円)と見積もられています。
いずれにせよ、こうした計画は選挙がらみのもの。将来、パース住民は、北から遠路はるばるの、それとも、面するインド洋からの、いずれの水を飲むことになるのか。選挙結果とともに、行方が注目されます。
(2005.2.7)
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