ブランチ・エコノミー
オーストラリア経済がこう呼ばれるようになって、しばらくになります。「ブランチ・エコノミー」とは、同国が80年代なかばに市場自由化政策を採用して以来、かっての主要地元企業がつぎつぎと外資によって買収・合併され、かっての本社は大半が海外に移転し、オーストラリアに残るものは支店(ブランチ)ばかりになった、そうした傾向を言う、一種の“自戒”、あるいは、やや“自嘲”めいた用語です。
別記
のように、オーストラリアの最後の大手地元企業であったWACリゾース社が、多国籍資源開発企業、BHPビリトン社によって買収され、いよいよ、地元企業と名乗れるものは、規模の小さな会社ばかりとなりました。しかも、今回の買収を行ったBHPビリトン社すら、もとをただせば、かってオーストラリア最大の地下資源企業であったBHP社が、2001年に、英国系企業のビリトン社と合併して生まれたものです。
オーストラリア生え抜きの企業が、こうして次々と姿を消してゆくことに、それを惜しむ声や、事実上の「経済植民地化だ」と反発する向きもあります。
そうした感情の表れ、あるいは、国産企業育成の観点から、オーストラリアでは、純国産の製品のラベルに国旗や地図(下写真)を印刷して、それがオーストラリア産のものであることをアピールしたものがあります。ことに、食品関係に多く見られます。
地元産を強調したコーンの缶詰。「メイド イン オーストラリア」と大書きにし、「ニュー・サウス・ウェールズ州バサーストで誇りを持って缶詰にしました」と表示。
政府も、国益の観点から、国外企業による無原則な合併・買収を許してきたわけではありませんが、結果として、こうしたブランチ化は避けられませんでした。
今回のWACリゾース社の場合も、当初はスイス系企業のエクストラータ社が買収をねらっていました。それに対しオーストラリア政府は、最初は拒否もにおわせる姿勢をしめしていましたが、元オーストラリア企業が競り勝って、上記のような結末となりました。
こうしたことから、豊富な地下資源に恵まれたオーストラリアも、その販売利益は完全には国内に還元されず、その相当部分は外資のふところに流出しています。
こうした傾向をもって、オーストラリアの「石切り場現象」とよぶ人もあります。後に残されるものは、掘り尽くされた結果の巨大な穴ばかりだ、というわけです。
(2005.3.10)
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