新年度への豪州経済概観
7月1日より始まった新年度(05−06年度)の経済見通しが出揃いました。14年間にわたって好調を続けてきた経済は昨年なかばあたりからブレーキがかかり、今年度も引き続き、減速ぎみで推移しそうです。
03−04年度には4パーセント強(
図−1
)の成長をしめした豪州経済でしたが、昨年度の結果は2パーセント程度と見積もられ、今年はやや回復するものの、3パーセント程度と予想されています。
図−1 GDP成長率の推移
昨年度、経済成長は顕著に減速
図−2 GDP構成要素伸び率の推移
国内支出の伸びの減速と実質輸出のマイナス成長が足を引っ張る
図−3 住宅価格の変化
住宅価格上昇の停止が消費を抑制
図−4 インフレと失業率
失業率の記録的低さにもかからわず、インフレ率は落ち着いている
資源輸出産品価格の高騰や世界的需要の拡大にもかかわらず、国内需要は低下し(
図−2
)ました。これは、危惧されてきた住宅バブルの解消(
図−3
)による需要の沈静化と、それに伴う消費支出の減退が原因です。また、主要輸出品である農産物は、深刻な渇水を原因とする減産のため、輸出に大きなダメージを与えました。
また、国際的に見て高めの利子率のもたらす豪ドル高は、輸出品の競争力を弱め、他方、輸入を増やす要因となっており、インフレ率の抑制にも貢献しています(
図−4
)。
労働力需給の切迫は、経済のボトルネックのひとつになってきており、企業の旺盛な成長にも抑制要因となっています。
オーストラリア経済が、今後もほどよい成長をとげるには、二つの条件が満たされる必要があります。
第一は、世界経済の伸びが落ちているとはいえ、平均以上の成長があること。ことに、米国と中国の経済の成長は決定的です。
第二の条件は、高成長をとげてきた住宅産業と旺盛な消費支出が「軟着陸」し、経済の力強さを下支えするパワーを失わないこと。ことに懸念材料は、住宅価格がいまだ高すぎ、今後の下降が予想されることです。住宅価格の下降は、ローンを抱える世帯に苦痛をもたらすのは確実で、それだけに、ハードランディングだけは避けなければなりません。
(資料の出所は、Australian Financial Review, 4 July 2005 より)
(2005.7.5)
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