日本 - 物作りの国、オーストラリア - 掘り尽くしの国
地下資源の貧富をめぐって、日本とオーストラリアが完璧ともいうべき補完関係にあり、過去数十年にわたって、互いの発展にとってのウィン・ウィン(両立)関係を築いてきました。そうした関係が、最近の資源産品価格の上昇により、ますますそのコントラストの度を強める傾向が表れ始めています。
下の二つのグラフを比べて見ましょう。ひとつ目は、これまでにも再三レポートしてきましたように、オーストラリアの地下資源企業の同国経済における重要度を、株価の推移で見たものです。二つ目は、世界主要国の、輸出関連製造業における、高・中度技術セクターの占める割合をランキングしたものです。
最初のグラフが示すように、2003年後半から、資源株が全産業株をさしおいて、ずばぬけた伸びを示しています。対2000年比で、資源株は全産業株の2倍に近い高騰率です。
第二のグラフからは、上位20ヶ国のうち、日本が、輸出関連製造業のうち、高・中度技術セクターの比率が最も高いことを表しています。一方、オーストラリアは後ろから4番目と、大きく見劣りしています。
国土を掘れば、資源が無尽蔵といえるほどに産出するオーストラリアが、輸出関連製造業のうちの低技術部門の比率がほとんどとなってしまうのはある意味では当然でしょう。しかも、経済をリードする地下資源企業の大半は、いまや多国籍企業によって占められ、また、機械化率が極めて高いので、雇用への反映の面でも、生産高と比べ、さほどではありません。
さらに、オーストラリアの製造業は、豪ドル高による国際競争力の低下、熟練労働力不足などにより、危機的状況にひんしており、「奈落の底への転落まじか」との警告の声も業界内よりあがっています。
地下資源輸出の伸びが豪ドルを高めに引っ張り、それがまた、製造業を追い討ちする。両立をめざして、オーストラリア経済の課題があります。
【注記】 S&P/ASX Resources は Standard & Poors 社の計算による資源株指数、S&P/ASX Industries は 同、全産業平均指数、S&P/ASX 200 は 同、200社平均指数。S&P/ASX 200P/E ratio は 同、200社平均株価・収益率指数。
資料出所:いずれも、Australian Financial Review, 28 September 2005.
(2005.9.28)
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