ただのお金でなくなる円
6月15日付の本号でも書きましたように、今、世界的に利率上昇の傾向があり、そういう意味で、イージーマネーの時代が終わりつつあります。日本も、昨14日より、これまでの「ゼロ金利政策」を解除し、短期金利の新たな誘導目標を年0.25%にし、それに伴い公定歩合も0.4%に引き上げられました。

オーストラリアの金融界は、2006年は強いグローバルな成長がみられているとしながら、日本の「ゼロ金利政策」解除、つまり金融政策の引締め化を、目下の最大のリスクと見ています。

7月4日付の大手経済紙、オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー紙によると、日本の中央銀行が5年振りに事実上「ただのお金」であった円の政策を変えることは、基幹金属、金、発展途上市場の株、低格付け社債などへの投機的資金を提供してきた「円・キャリー・トレード」の幕引きとなるから、としています。

同紙によると、「このキャリー・トレードは、おそらく、世界でもっとも安易な取引である。それは、世界で最大の預金保持国日本でほとんどコストなしでお金を借り、高成長の資産に投資し、リスク無しのキャピタル・ゲインをかせぐもの。」

ABN Amro 銀行によれば、4月と5月の二ヶ月間に、日本の銀行機関より約1,400億米ドル(16兆円)が流出したと分析しています。

「円は、それほどに低利率、高流動性の国際通貨なので、日本の国外に流出しないことが不思議だ」と、同銀行のアジア通貨戦略家は同紙に語っています。

つまりは、そうしたただのお金がただでなくなるわけで、だからこそ、投資家にとって最大のリスクというわけです。そのように考えられているのが、日本の総計1,506兆円の家計金融資産。日銀も、「ゼロ金利政策」を終わらせる道筋作りに、「利率が1%上がれば家計所得は6.2兆円増」(7月10日付日本経済新聞)といまさらながらの宣伝を始めています。

うまみの日本のお金が使いにくくなるという、海外の投資家のお話です。

(2006.7.13)

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