昨年11月に政権に着いたラッド労働党政府は、2月13日、新政府による初の議会の冒頭議事として、過去のオーストラリア政府が行ってきたアボリジニ(原住民)への差別抑圧政策への公式の謝罪を行いました。この歴史的議会には、アボリジニの諸代表や過去の歴代首相も列席しましたが、この謝罪を頑強に拒否してきた前ハワード首相のみ、姿を現しませんでした。以下は、ラッド新首相が行った公式謝罪の全文訳です。
- 今日、我々は、この国土の原住民とその人類史上最古の現存する文化を誇りとします。
我々は、過去の彼らへの誤ったふるまいを深く考えます。
ことに我々は、「盗まれた世代」――この国の歴史における最大の汚点――である人々への行為を深慮します。
今や、誤った過去を正し、将来へ向って自信をもって進む、オーストラリアの歴史の新しいページを開く時です。
我々は、オーストラリアの同胞に、大きな悲しみ、苦しみ、そして喪失を与えた、歴代の議会や政府の法律や政策を謝罪します。
我々は、特に、アボリジニやトレス海峡諸島の子供たちが、家族や同胞や郷土から連れ去られたことを謝罪します。
そうした盗まれた世代の、その子孫の、そして取り残されたその家族の、痛み、苦しみ、そして傷つきに、我々は、謝ります、と言います。
そうした父、母、兄弟、姉妹に、家族と同胞の絆を断ち切ったことに、我々は、謝ります、と言います。
そして、この誇り高き人々と文化に与えた、尊厳の破壊と退廃に、我々は、謝ります、と言います。
我々オーストラリア議会は、この謝罪が、この国が与える癒しのいくらかにでも貢献したいとする精神として受け入れられるよう、つつしんで求めるものです。
この大陸の偉大な歴史の新たなページが、今、開かれることを採決し、未来のために、我々はそれを暖かく迎えます。
我々は、本日、過去を認め、あらゆるオーストラリア人に与えられる将来への権利を主張することにより、この最初の一歩とします。
今後、こうした過去の不公正が議会で議決されるようなことは、二度と起こってはなりません。
今後、我々は、寿命、教育水準、経済機会における格差を縮める、すべてのオーストラリア人、原住民、非原住民による決定を採用してゆきます。
今後、我々は、過去の試みが失敗した懸案に対する新たな解決策を取り入れて行きます。
今後、相互の尊重、相互の解決、相互の責任を基礎として行きます。
今後、その生まれが何であろうとも、すべてのオーストラリア人は、真に平等なパートナーであり、同等な機会と、この偉大な国オーストラリアの歴史の次のページを開く上での、同等な利害関係をえます。
以上のように、この議決は、野党をも含む超党派的合意を目的としたもので、その分、決定内容は精神的な宣言にとどまっています。今後、この謝罪にもとずく、補償要求が提出されることが確実ですが、必ずしもこの議決がその補償を約束しているものではなく、ひとつひとつの裁判において、その決定がなされてゆくものと解釈されています。
ともあれ、「謝ります」 (原文では「sorry」) という言葉が三度も繰り返されていることに、アボリジニ関係者の間でも、それを歓迎して受け入れる見方が多いようです。
資料: The Weekend Financial Review, 13 eFebruary 2008. 翻訳: 松崎
(2008.2.14)
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