トヨタのハイブリッド車の豪州生産声明の含み
6月10日、ラッド豪州首相の日本訪問時に発表された「トヨタがハイブリッドカーをオーストラリアで生産」とのニュースは、豪政府の中で、微妙な響きをかもしています。

この発表の内容は、2010年初めから「カムリ」のハイブリッド車を年間1万台生産するというもので、環境対応車の開発・生産の促進を目指している豪州政府はトヨタに対して、3500万豪ドル(約36億円)を支援するという表明も合わせてありました。

ところが、この政府資金援助については、政府の約500億円相当のグリーンカー資金の計画はあるものの、政府内でトヨタへのこの出資の合意はないままで発表されたようです。また、トヨタがこの政府援助なしでもオーストラリアでのハイブリッドカーの生産をするのかどうかも、確定されているわけではなさそうです。

また、オーストラリアでは、車の輸入関税を、現行の10パーセントから2010年より5パーセントに引き下げるとの既定方針があります。オーストラリアの自動車製造業界は、この引き下げに不満で、また、先の高級車(つまり輸入車)への増税の政策には歓迎の意向をあらわしています。こうした国内産業保護への要望とこのトヨタへの援助の話とは、同じ流れのものと見られます。

もともと、この車の輸入関税引き下げ政策は、自国自動車産業の世界市場における競争力強化のための“愛のムチであるのですが、政府資金(税金)の使用が、援助金という直接援助か関税引き下げという間接援助かのいずれがより有効なのか、議論の分かれるところです。

そもそも労働党政府にとって、国民の雇用確保は自明の政策であり、去る三月の三菱自動車のオーストラリア生産からの撤退に見られるように、オーストラリアの製造業の柱=主要な雇用元である自動車製造業界が崖っぷちにせまっているのは確かな状況です。

ともあれ、トヨタが、その市場制覇力と環境対応技術の先進性にものを言わせ、オーストラリアでの優位性をさらに進めているのは疑いありません。ただ、トヨタのハイブリッドの技術はもはや二番煎じのもので、最先端の技術は電気自動車ではないかと主張する、トヨタと現政府との共同歩調に疑問をはさむ記事もみられます。

資料出所:13 and 14-15 June, Australian Financial Review,

(2008.6.14)

 
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