以下に訳した記事は、たかだかオーストラリアの一例ということで、世界がどうのということではありませんが、頻繁に交代する首相という異例な日本の政情を見る、世界のある視点が現われています。
プラダ#と真珠をまとった刺客
アラビア語を話す元テレビジャーナリストの小池百合子(56歳)は、防衛、環境大臣を歴任した後、いまや日本最初の女性首相――人口の半分を台所に釘付けにしている製造業大国の興味ある変化――にならんと本気で意気込んでいる。
ただその意気込みも、日本の女性が結婚して家庭に引っ込む前、平均して十年の就業経験を持つのみであり、高齢化する妻たちの多くが、その夫が職場とカラオケ酒場から定年退職して家庭に戻ってきた際、改正された離婚法で引き続き夫を閉め出そうと待ち構えているような国では、相当難しい挑戦であるかも知れない。
しかし、下院議員のわずか9パーセントが女性――世界ランキングでは、ガンビアとルーマニアの間に位置する――で、しかも、2005年に行われた前回の総選挙で、人気絶頂であった小泉首相が、郵政民営化の反対者に対抗してスマートでテレビ映りの良い女性たちを「刺客」として放った際、この数値が2パーセントポイントもジャンプした状況からすれば、その挑戦もあながち困難とは言えない。
それから三年、福田首相の突然の辞任を受けた繰り上げ総選挙を控えているこの国では、その刺客中の刺客である小池は、小泉の政治・経済改革の時代を再興させる人物として自身を売り出している。
六年間のほどほどの経済成長の後の景気後退や、人口減少と高齢化を抱えてデフレの恐れから逃れきれないなかで、何らかの変化が必要とされているのは確かだ。
1990年台以降のほぼ十年間に、日本の首相は九人も変わり、ことに最後の二人の一年そこそこでの退陣は、政権担当能力の後退とみなされている。
だが、市場関係者の多くは、福田首相の退陣は、政策運営を左右する官僚体制に変化がなく、自民党が、トップの地位を占めるにたる血統ある有力者を数多く抱えている限り、たいした影響はもたらさないものと見ている。
そうした候補者たちの先鋒である党幹事長の麻生太郎や経済財政大臣の与謝野馨らの平均年齢は69歳で、まさにその特徴そのもである。
クレジットスイスのエコノミストの白川ひろみちは、「後継者選びは、与党内部での、改革派と反改革派との溝を明らかにし、総選挙は、日本の有権者に、改革の必要を表現する貴重な機会を提供することになるだろう」と語る。
彼の予想によれば、経済改革派は小池に合従連衡して、小さな政府、規制緩和をとなえて経済成長をめざし、それに対し、麻生は、財政投入による刺激策を唱えている。小池の成功のカギは、風変わりながら未だに人気根強い小泉元首相の後押しにかかっている。
小池にとっての最大の課題は、小泉時代を批判する候補者の多いことである。また、自民党首脳たちには彼女を「渡り鳥」――小泉劇場に登場するまでに四つの政党を渡り歩いた――と見、マイナスの評価をしている。だが有権者には、それは問題とはならないであろう。
したがって、経済成長を支持するアラビア語をあやつるプロの対話者は、悪名高き政策能力不足と経済の落とし穴に足をとられる内向きのこの国にとって、彼女はまさにうってつけではなかろうか。
( #: プラダは、イタリアの革製品を中心としたのファッション企業)
記事出所:Australian Financial Review, 8 September 2008.
(2008.9.8)
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