オーストラリアは今日7月1日をもって新年度に入ります。この年度変わりを前にして、このところのオーストラリアには、予想された不況もそれほどのものではなかったとの、一種の楽観論が広がっています。以下、二つの面から、その様子を見てみます。
下の表が示すように、オーストラリア経済の成長見通しが、幾つかのケースにおいて、マイナスは2009年のみで、2010年は再び成長に入ると予測していることです。
ことに、IMFの予測をみると、今年4月のものにくらべ、6月のものが、大きく改善していることが解ります。
ちなみにOECDの日本予測 −6.8 0.7
第二は、大手経済紙に見られる、最近の論調です。6月27−28日付けの 「大下落の後」 と題した記事を以下、翻訳して掲載します。
会計年度はまもなく終わるが、仮に一時的であるとしても、我々はほっと一息つくことができている。我々はなんとかやり切った。我々は確かに損を出した。株式市場は1982年以降最悪で、まだ25パーセント下落したままだが、もっと悪かったかもしれない。市場は3月の41パーセント下落からは立ち直っており、少しながら自信すら見え始めている。実に素早い対応だった。
ともあれ、他の先進国と比較して、我々はかなり良い。つわものオージーはまたラッキーカントリーを作り出そうとしている、そう言ってもよい。もちろん、ラッド労働党政府がいいかじ取りをしたとはほめられて良いが、そうであったとしても、世界が不況にさらされている時、我々はなんとかそれをしのいできている。
なぜ、我々はそんなにラッキーだったのか。
住宅市場は、豪邸クラスで20パーセントの下落を見たものの、全体では、米国や英国ほどの下降を見せたわけではない。実際、金利は過去50年来最低まで引き下げられ、初めての住宅取得者には2万ドルの政府補助が与えられて市場を活性化してきたが、それ以前から、住宅建築をひかえ、需要低下に合わせてきた。それは、自宅購入者には幸運なことだった。
我々の銀行システムも、破綻することなく、機能してきている。確かに、政府保障が与えられて機能の正常化が図られ、海外からの借入も継続した。
もちろん、銀行は、その借り入れ利息の上昇を我々に転嫁して、たちの悪さを見せつけてはきた。
我々の経済は、低調とはなったが、深刻な不況までには至らず、柔軟な労働市場が需要の軟化を調整し、予算上の失業率予測を大きく下回ったままでいる。Work Choiceはハワード前首相を政権から引きずりおろしたが、その政策は失業者数の増加を防いできている。
しからば、回復を待つにせよ、あるいは、次の悪化に備えるにせよ、世界同時不況から我々が学んだことを再度振り返ってみるべきだ。
いくつものプラス点がある。第一に、ボーナスは無くなり、週四日の労働となったとしても、仕事があることはよいことだ。世界同時不況がもたらしたものは、たくさんの無駄をなくしたことだ。
第二は、我々は、もっともよく働く国民との評判を無くしたことだ。多くの人が、目標不達成への心配をいだくことなく、家庭サービスやレジャー時間を楽しんでいる。
第三に、経済的に、我々は世界と直結していることを知ったことだ。我国の貿易の成長には、海外からの資本の流入が不可欠で、世界同時不況は、それをつぶさに教えてくれた。つまり、資金の流入が止まり、我々の経済は収縮しはじめた。
さらに我々が学んだことは、我々が十分に貯蓄していないことだ。
また同時に言えることは、我々がいかに深くアジアの経済と結びついているかということだ。ことに、アジア、なかでも中国経済の腰の強さが、我々の経済を下支えしているかということだ。中国の景気浮上政策に期待するところが大きいのだ。
これは驚くべきことだが、政府負債について、過去何十年にもわたって、その問題ばかりを心配してきたが、いまやそれに耳を傾け、それを取り入れるにいたった。むろん、その政策が裏目に出た場合は、その返済に一世代を要することとなる。多くの人が言うように、納税者にお金を払い戻すことは異常なことだが、それが、国のインフラストラクチャーの建設に使われるなら、長期的に働き、この先何十年もの間、その効用を提供してくれる。
いま、2008会計年度を終わらせようとしているが、このように、将来への明るい見通しが見られている。だが、我々は、過去に体験したことを忘れるべきではない。さもないと、それは再現し、もう、ラッキーであるとはならなくなるであろう。
(出所: Australian Financial Review, 27-28 June 2009)
(2009.6.30)
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