強制投票か、自由投票か
オーストラリアはシンガポールやブラジルなどと並んで強制投票制度をもっている国のひとつですが、21日の投票から一週間がたってもまだ次期政府がきまらぬ事態に、選挙のやり直しの可能性も語られ始めています。
そんな議論の中で、今回の投票結果で、過去最高の無効投票率に注目されています。集計によると5.5パーセントの票が無効となり、その中には白票の投票も多く、まだ選挙管理委員会の詳細な分析は発表されていませんが、現行の強制投票に対する抗議票が増えているのではないかという議論が上がってきています。
オーストラリアの投票制度では、正当な理由もなく投票をしない人には50ドルの罰金が科されます。そのため、各選挙では、おおむね95パーセントの投票率となっています。日本の5,6割の投票率からすれば驚異的な数字です。
今回の議論の主な論点は、強制投票は二大政党には効率的で有利であるが、少数政党には不利に働くき、その二大政党の選挙争点に目立った違いがみられなかった今回の選挙では、無効投票の増加は、そうした現状への批判であると見るものです。
言い換えれば、自由投票制にすれば、グリーンなどの少数政党の支持者は熱心で、自由、強制にかかわらず選挙に行くというものです。
たしかに、自由投票にすれば、関心の低い「ドンキー」票の多くは投票に行かず、より熱心な有権者だけによる投票となるのは確かでしょう。
その一方、自由投票支持者の伝統的な理由は、自由な社会である以上、投票もそうであるべきだとの主張です。自由経済の名において、どんな経済になってきているのかを目撃している昨今、自由投票の名において、基本的な権利もないがしろにされる事態も予想されます。
ともあれ、もっと詳しい分析結果が待たれます。
(2010.8.30)
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