「高コスト、低生産性国」 ― 経済団体が改革を要望
コスト高を主因とする自国経済の国際的競争力の後退を懸念して、オーストラリアの主要な経済団体が、労使関係法の大規模な改正を求め、その生産性を高めるよう、政府に対する圧力を強めています。

最近の豪ドル高や物価・賃金のコスト・インフレは、オーストラリア産品の国際価格を引き上げて、その国際的競争力を落とし、国内製造業の閉鎖や海外移転、サービス業種では雇用削減が相次いでいます。

これまで、二つの速度をもつ豪州経済のうち、ブーム状態の資源関係の企業をねらって、労働組合の重点的な攻勢が続いて賃金の高騰をまねき、使用者の間で、労働組合の合法活動を規定する Fair Work Act を改定する要求が高まっています。ことに、重点攻勢の手段として用いられる pattern bargaining (日本でいう拠点スト)の制限や使用者側を縛る誠意交渉義務の見直しなどが取り上げられています。

Business Council of Australia(大手企業団体)、Australian Chamber of Commerce and Industry(中小企業団体)、そして、Australian Mines and Metals Association (資源産業団体)の三団体は、それぞれの観点から、法の改定項目をまとめた要望を政府に提示しています。

こうした要望を受けて、ビル・ショーテン職場関係大臣は、法の運用を調査する独立組織を指名し、その報告書を5月末までに受け取るとしています。同大臣は金融・年金大臣も兼任し、MBA学位を持ち、企業側との人脈も豊富な異色の労働組合出身者で、その手さばきに注目が集まっています。

1980年代半ばにも、オーストラリア経済の低生産性が問題とされ、当時のホーク労働党政権のもとで、労使関係制度の大規模な見直しが行われました。そして、それまでの産業別の対応から、企業別の対応等へと、よりきめ細かくフレキシブルなシステムへと切り替えられ、生産性向上に大きく貢献した歴史があります。

今回の動きは、政府サイドというより、ビジネスサイドからの要望が主ですが、急速に悪化している雇用状況の中で、労働組合側も雇用確保のための譲歩は避けられない情勢もあり、労使関係制度の改善がどのように進んでゆくのか、注目されています。

 (2012.2.21)
 
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