日本企業のオーストラリアでの資源開発への投資が日増しに活発となっている中、三菱商事が西オーストラリア州のウラン鉱山権益を買収した投資が、9月6日に行われる同州選挙の結果とからんで、その行方が注目されています。
高騰する石油価格やCO2を出さない発電として注目されている原子力発電所の建設計画が世界的に増加していますが、その燃料であるウランの価格も高騰し、その資源の争奪をめぐる動きも活発となっています。
そうした動きのなかで、この7月、三菱商事がカナダのウラン資源大手のカメコと共同で、西オーストラリア州のキンタイア鉱山(パースの北東1250キロ)の権益を、リオ・ティント社より買収 (同商事負担分は160億円、合計は530億円) しました。
オーストラリアは、カナダにつぐ世界第二のウラン資源保有国ですが、オーストラリアには原子力発電所が一ヵ所もないなど、伝統的に原子力やウラン鉱山開発とは距離をおいた政策が維持されてきています。
現政権を握る労働党もこれまでウラン資源開発には反対の姿勢をしめしてきましたが、昨年の政権奪回の公約のひとつが、ウラン開発容認への政策転換でした。こうして、連邦政府は、ウラン開発に積極的である一方、その開発の許認可権を握る西オーストラリア政府は、クインーンズランド州とならび、いまだに反対の姿勢をくずしていません。つまり、6日の選挙で現労働党州政府が政権を維持した場合、獲得した鉱山開発の権利も、すぐには役立たないこととなります。
しかし、来る選挙をめぐって、西オーストラリア州内では、鉱山業界はもとより、生活水準の向上を期待する現地のアボリジニー団体からも、こうした反ウラン政策維持への批判が高まっています。
すでに転換を決めた隣の南オーストラリア州では、去る三月の三菱自動車の現地生産打ち切りにみられるように、自動車産業をはじめとする製造業雇用が縮小傾向を避けられないことから、あらたな産業基盤として地下資源産業への期待が高まっています。ことに、単独で世界最大の埋蔵量が推定されているオリンピック・ダム鉱山が同州内に位置し、その目玉となっています。
資料出所: 28 August 2008, The Australian Financial Review, 日本経済新聞、7月10日および8月18日
(2008.8.30)
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