去る5月2日、ケン・ヘンリー連邦財務事務次官がまとめた抜本的な税制改革案が発表されましたが、その見直しの目玉の一つである「リゾース・スーパー・プロフィット・タックス(RSPT)」をめぐって、資源産業はもとより、今年末に予定されている総選挙にからめて野党が格好な攻撃材料ととして取り上げ、オーストラリア政財界をあげての沸騰した議論が持ち上がっています。
この税制改革報告は、今後の医療費の増大への対処を最大の目的に、長期的な税制の見直しを行ったものです。そのなかで、このRSPTという新税は、資源ブームやその寡占状態を活用し、従来の数倍もの純利益を上げている同産業に、新たな税をかけて歳入増をはかり、企業税の30%から28%への引き下げや、企業年金率の現行9%から12%への引き上げに備える原資とするなどとされています。
報告では、資源関係企業に課されるこの新税率は40%とされていますが、今後、政府と業界との交渉にかけられて詳細が決まってゆくでしょう。
資源産業界は、この新税は、金の卵を産むアヒルを殺すもの、と攻撃し、野党も、それは資源産品の値上げをもたらし、ひいては、食糧や住宅価格の高騰をもたらして全国民に影響すると警告しています。
ただ、経済関係者の見方はもっと冷静です。連邦準備銀行の副総裁は、資源産業のブーム状態による資材や技術労働力の不足が、この新税で同産業の活動が抑制されるなら、その恩恵は全産業にも及ぶと発言しています。最終的な認可を待っている資源関係プロジェクトは、その合計額で1000億豪ドル(約8兆円)にも達し、それらが一斉に動き始めれば、そうした逼迫がより深刻となるのは避けられません。
また、勢いのあり過ぎる資源産業と、低迷から抜け出せない製造業といったように、オーストラリア経済は「二つのスピード」経済となっており、この税制改革により、その格差が解消されるとの見解もあります。
さらには、80年代の末、当時のホーク労働党政府によって「石油資源レント税」が新設された際、「それは原理的にまるで共産主義で、実際には機能しない」との議論がありましたが、今日まで維持されています。
記事出所:Australian Financial Review, 12 & 14 May 2010.
(2010.5.14)
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