5月2日に打ち出された「リゾース・スーパー・プロフィット・タックス(RSPT)」をめぐって、政府と資源産業、主要地域での協議はつづけられていますが、議論をすればするほど、対立点が浮き彫りとなり、その落とし所はまだ見えてきていません。それに、今年年末の総選挙までに最終案を決定するとしていた方針に、ラッド首相から、来年までも議論を続けるかの発言も出て、時間的にも行方が見えにくくなっています。
現在ブーム状態にある資源産業は、オーストラリアの株式市場を活性化させ、その総市場価値を上昇させることに貢献していますが、この新税の効果として、株価の引き下げをもたらすと観測されています。年金基金団体の予測によれば、総年金基金のうち、オーストラリアの資源企業へ投資されているのは約10パーセントといい、新税の影響は1パーセントほどと見積もられています。
新税は、上がった利益への課税という方法から、すでに投資段階を終え利益回収に入っている二大資源企業――BHPブリトン社とリオ・ティント社――に大きく課税効果が現れると見られ、投資段階にある新プロジェクトを立ち上げ中の中小資源企業にとっては、むしろ大手に食い込むチャンスとなるとの分析もされています。
そうした二巨人の一つ、BHPブリトン社は、50万人の株主に手紙を送り、利益水準を引き下げるこのRSPTの導入への反対を訴えています。
いずれにせよ、この新税は、一定水準以上の利益に課税し、その原資をもってインフラ投資や社会保障を充実させるという、ロビンフッド式の儲け再配分の効果があります。それだけに、大衆的には人気があり、他方資源企業は、テレビ、ラジオに 「雇用を破壊する」 との宣伝を盛んに入れて、危機感をあおりだそうとしています。
記事出所:Australian Financial Review, 12-14 June 2010.
(2010.6.14)
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