丸紅はオーストラリアで世界最大級の鉄鉱石鉱山の開発に参画する。豪資源会社から同国西部の鉄鉱石鉱山の権益12.5%を取得。韓国の鉄鋼最大手、ポスコなどと共同で2014年から生産を始める。総事業費は約8400億円。丸紅は日本の年間輸入量の約1割に当たる1千万トン超の鉄鉱石を確保する。日韓連合で開発に取り組み、資源メジャーの寡占化が進む鉄鉱石の安定調達につなげる。
世界の鉄鉱石市場は英豪資源大手のBHPビリトンとリオ・ティント、ブラジルの資源大手ヴァーレが供給の7割を占める。中国など新興国の需要増で価格はなお高値圏で推移しており、調達先の多様化が課題となっていた。資源メジャーが入らない今回の取り組みが広がれば日本の鉄鋼業界は鉄鉱石を安定した価格で調達できる。
丸紅が権益を取得するのは豪州西部の西豪州ピルバラ地区にあるロイヒル鉄鉱山。権益の取得額は1300億円前後とみられる。月内にも契約する見通し。ポスコも15%の権益を取得し、残りを現地資源会社のハンコック・プロスペクティングなどが保有、鉱山を共同運営する。
丸紅は今回初めて鉄鉱石の鉱山権益を取得し、生産される鉄鉱石の2割を日本に供給する考え。同鉱山は他の新規鉱山プロジェクトに比べて品質が高く、日本の鉄鋼メーカーと長期契約を結び安定的な供給を目指す。
鉄鉱石価格は足元では欧州の景気低迷などで下落基調にある。12年4〜6月期の輸入契約は1トン当たり130ドル程度(豪州品、本船渡し)と1〜3月期比で1割安となる見通し。ただ、価格が上昇し始めた04年に比べるとなお約6倍の水準。中国など新興国の需要が今後も伸び、中長期的に高値で推移する見通しだ。
日本は鉄鉱石を全量輸入している。10年の輸入量は1億3400万トンで、豪州が6割、ブラジルが3割を占める。生産・販売面では資源メジャー3社の寡占化が進む。一方、買い手側では粗鋼生産量が年7億トンに迫る中国の購買力が世界市場で強まっている。
資源メジャーが入らない大規模鉄鉱山の開発では、ブラジルのナミザ鉄鉱山に伊藤忠商事とJFEスチールが出資しているほか、住友商事がブラジルの鉄鋼大手、ウジミナスが持つ鉱山の権益3割を取得している。丸紅はより近距離の豪州に権益を持つことで調達力を高める。
(日本経済新聞 2012年3月17日 朝刊)