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<連載>  ダブル・フィクションとしての天皇 (第62回)


奇妙な混在


 読者には、奇妙な混同と思われる事かも知れませんが、この頃の私には、自分が日本人であるということに関わって、三つの世界の同時並行的な混在があります。
 その第一は、この 「天皇の陰謀」 の訳読で、それはいわば、自分の母国に深く根をおろしている 「天皇制度」 という所与環境への懐疑的対応です。つまり、それは、同じ所与環境であっても、たとえば、自然環境と同列に扱えるような、私にとっての丸まるの条件なのか、ということです。言い換えれば、何か 《虚構》 が伴っていると受け止められる、私のかんぐりです。
 第二は、別掲している、新しく始まったシリーズ、 「熱力業風景」 にある種の意気込みが表されていることです。単純明快にいえば、 「困っている日本を助けたい」 と思う気持ちです。それは、 「困っている友人を助けたい」 という気持ちと同質のものです。ただ相手の数が違うだけです。つまり、その 「日の丸プロジェクト」 を、何とか成功裏に終わらせるよう、微々たるものながらなんとか貢献したいというものです。昨年、働いていた日本食レストランで行った募金活動も、同列の発想のものです。
 ついでに言うと、もし、昨年の大震災がなかったら、この第二の世界は生じていなかったかも知れません。そういう意味では、この大震災は私を含め日本人を変えたようです。(昔だったら、これほどの大震災がおこったら、元号も変えられたでしょう。)
 第三は、これは誰しも同じように持っているだろうと思われる、日本語を媒介としてできている、私の精神の生息する世界です。日本文化圏といってもいいのかも知れませんが、その内でも、あくまでも自分という圏内に属している無形の世界です。読むもの、聞くもの、書くもの、みんなその世界をつくる要素です。先に終わった、 『ボケずに生きる』 の訳読も、この世界のものです。
 もしもの話ですが、私がオーストラリアの国籍を取ることになったとしますと、この三つの世界はどうなるのでしょう。おそらく、そうであっても、この私の内のこの構造は変わらないでしょう。長い先のことは解りませんが、私の命の続くくらいの先なら、大した変化はないでしょう。
 言ってみれば、これらは、私の存在証明にかかわる世界です。ですから、国籍が変わる位で、これが変わるものではありません。つまり、私にとって、国籍を含めて、それらはみな、選択の問題ではありません。

 ということで、ではその第一の世界の一部、第17章 (その2) へとご案内いたしましょう。

 (2012年2月22日)


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