与党連合の大きな勝利:10・9総選挙結果
去る10月9日に行われた総選挙は、どちらが勝っても接戦との予想をくつがえし、与党、自由・国民連合の大差による勝利となりました。最終的な結果はまだ出ていないものの、与党連合は、下院での優勢をさらに増し、上院でも過半数を事実上獲得する見通しです。こうして、法案可決のネックであった上院での議席不足も解消、その政策のいっそうの推進が確実となりました。

与党の四期連続勝利となるか、新星レイサム党首の率いる野党労働党の政権奪還がなるか、と注目されていたこの選挙でしたが、与党は、過去三期の順調に推移してきた経済運営の実績を背景に、レイサム氏の若さゆえの経験の浅さと労働党の経済運営への不安を強調し、有権者の保守心を巧みに票に結びつけました。

ことに、経済発展を支てきた住宅ブームにより、多くの国民が記録的なローン残高を保有するようになり、借り入れ利息の動向に神経質となっていました。そこへ、過去の労働党政権時代の高利率を宣伝、その不安心をあおることに成功しました。

こうした国民のローンに依存した経済成長は、いったん破綻した場合のそのもろさも指摘され、政府の経済運営の懸念材料のひとつとされてきました(その様子は、本サイトでも記事にしてきました、「
心配される世界的住宅市場バブル」、「住宅バブルの終焉」参照)。

つまり、選挙の論戦では、過去の与党の経済運営の弱点を、みごとにも野党の弱点にすりかえることに成功したとも言えるわけで、与党を率いるハワード首相の老獪さを、前回総選挙に続け(「
ポピュリズムは、飼い主に噛みつく」参照)、またしてもみせつけた選挙となりました。

正直なところをいいますと、筆者(松崎)は、この結果に結構がっかりさせられています。というのは、別の記事(「オーストラリアって、いい国ですよ」)にも書きましたように、オーストラリアのよさは、ひとことで言って、そのイガリタニズム(平等主義)とフェアー精神にあると思っているからです。つまり、今度の選挙は、その深いところで、こうしたオーストラリアのよさか、それとも、ローンぶくれしたものでも経済成長がいいか、を争っていたところがあると見ていたからです。

選挙結果を分析した報道でも、「新たな時代」に入りつつあるとの見方もあります。それが正しいかどうか、もう少し長期的に観察してゆく必要がありますが、少なくともこの選挙結果は、そうした方向への一歩であることは間違いないでしょう。

日本では、イラク派遣問題が、この選挙の大きな選挙争点であるかのように報じられていたようですが、それは一争点ではありましたが、決定的要素ではありませんでした。もちろん、ハワード首相は、強力なイラク戦争支持派で、この選挙結果に、ブッシュ大統領は、ことさらの祝辞を表しています。

(2004.10.14)
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