続・交通システムの進化:空はどこまで

投稿者 MIRAI-MIN

近未来の交通システムを予想する時、誰しも期待するのが空、つまり飛行です。そして最新テクノロジーの粋を集めて構想されているのが、“空飛ぶタクシー”たる自動操縦ドローンです。

すでに、ウーバーを筆頭に、その実現へと向けた準備が着々と進められており、投資家も大きな期待を寄せています。過密化した大都市での交通混雑を回避する方法として、三次元空間を使う自動化した“車輛”交通システムです。

前号に投稿した「交通システムの進化」においては、鉄道と道路の融合に焦点を当てました。しかし、そうした構想に、空路を抜いては未来的ではない、との問いが当然に生じています。

むろん、地表に限った交通システムは、ことに都市部では、一部は地下化を遂げているものの、その輻輳は限界に達し、新たな突破口を、空に向けて立体的に探る方法が当然に問われるわけです。

 

そこなのですが、その空飛ぶ新交通システムは日本ではどこまで可能か、という問いが生じています。すなわち、これは極めて現実的で、いわば“生臭い”点検が必要なものなのですが、日本の交通の未来を構想する上で、ネックとならざるをえないものです。

と言うのは、日本の空、ことに首都東京周辺の空は、敗戦以来、軍事戦略上でアメリカの支配下に入っています。そこで「空飛ぶ自動操縦機」といった構想は、もし日本が独自で展開した場合、こうした米国の世界軍事戦略に触れるばかりでなく、そうした新産業はまさしく米国の将来への切り札となる先端経済戦略のひとつと見るべきであって、米国はあらゆる既得権とテクノロジー上の強みとそして外交術策を駆使して攻めようとしてくるはずです。

東京周辺の空は、米軍の横田基地を中心とした軍事制空権によってカバーされているため、現行の民間航空機すら、その広大な空間を迂回する空路を設定せざるをえず、自国しかもその首都の空でありながら、東京上空(7000m以下)を飛ぶことはできません。

つまり日本に関しては、その空が、見るほどには透明でないといった現実的制約が存在しています。

むろん、歴代の国や東京都政府は、その返還を希望し交渉してきてはいます。しかし、日本の“属国”同然な立場上、米国には及び腰でしかそれを求められず、事実上、無視されたままとなっています。

つまり、米国がその世界戦略の重点として、自動大型ドローン輸送にまつわるこうした強みを、ことに日本においてみすみす手放すとは考えられず、現実策として日本は、その返還への追求は一方で進めながらも、目下の主眼は、地上交通システムの独自で異次元な進化に定めざるをえないと言えます。

 

戦後、日本の航空産業の復興は米国によって禁じられ、数十年遅れてようやく数周回遅れの開発レースに参加してきています。しかし、かってのYS-11といい、現在開発中のMRJといい、日本の開発した航空機が先発する欧米の牙城であるこの市場で勝ち残るのは、たとえニッチな分野を狙ったとしても、きわめて厳しい状況にあります。

おそらく、日本の空の自由は、そうした日米関係のしがらみに縛られ、そうはやすやすと手に入るとは予想できず、近未来の突破口として期待される余地は微小――おそらく、米国側での開発が十分済んだ後、その開発済み製品の売り先の創出という観点で、日本の空の制限が緩められる――と見るのが、残念ながら妥当なところでしょう。少なくとも、首都東京周辺に関する限りでは。

したがって、もしそう見るのが妥当とするならなおさら、新地上交通システムへの、それこそ全資源を集めた開発は生命線と言え、さもないと、日本の今後は、無用を見越した原発を押し付けられ、悲惨で無様な後始末を自ら招いているように、セカンドハンド製品の売り先市場へと落ちぶれることとなるでしょう。

 

 

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